「……そう、ですか」

私の耳に届いたあの方の声は、少しだけ淋しそうに聞こえます。

ごめんなさい、ごめんなさい。
本当にごめんなさい。

私は心の中で、何度も謝りました。

あの方のささやかな願いすらも叶えられないなんて、なんて私は卑怯者なんでしょう。

「ごめんなさい」

心の中の呟きの一つが、言葉になって零れ落ちます。

「いえ、謝られることはありません」

そう言ってくれたあの方の声は、ただひたすら優しく、私は思わず母の胸で眠っていた子供時代の記憶が蘇りそうになりました。

そのくらい、ただ、ひたすらに優しい声だったのです。

許されたのだ、と感じました。