雅之の話とは、こうだ。

昨夜、月があまりにも綺麗だったのでそれにあう音楽でも奏でようと、お気に入りの笛を携えて東河へと出掛けていった。
そこで、笛を演じていたら、この世のものとも思えない美しい声を持った姫君に声を掛けられたという。
しかし、姫君はどれほど頼んでもその姿を見せてはくれない。
これはよほど身分の高い方だと想い、その方に請われるがまま朝まで笛を吹き続けていた。
夜が明ける頃、姫君は「ありがとうございます」という細い声を残して忽然とその姿を消してしまった……。


そういう話なのである。


なんとか家にたどり着いた雅之は疲れた体でそのまま寝具へと横になり、龍星の使いで目を覚ました。

そういうことであった。