「調子が悪いなら無理して来なくても良かったのに」

自分から連絡を送っておいたくせに、美形陰陽師は冷たくそう言い放つ。

「いや、違うのだ龍星。
調子が悪いのではなく先ほどまで眠っていたのだ。
……朝からずっと」

「朝からずっと?」

「そう」

御所勤めをしている雅之が、一日中寝ていたとなるとさらに珍しい。
龍星は紅い唇を艶めかせて問う。

「昨夜、何か言えない事でも?」

言葉に出して答える前に、さっと、雅之の頬に朱がさした。

「私、席を外そうか?」

毬が気を利かせてそう言う。

「いや、差し支えないよ、毬」

思わず表情で何かを伝えてしまったことにようやく気がついた雅之は、苦笑を浮かべながらそっと、自分の頬を撫でていた。