私の想いなんて、微塵も届かないのでしょう。

あれほど世界に君臨していた月明かりもやがて、その力を弱め。

やがて、都には優しい朝焼けが顔を出してきます。

あの方は、本当に一晩中笛の音を聞かせてくださったのです。

どこの誰とも知らない、私のために。

「ありがとうございます」

月明かりが消え去る前に、私は、最後の言葉を口にしました。

「またここでお会いできますか?」

あの方の声が、切なく耳に響きます。