その夜、父親が帰ってきて心は話をした。

「ぱぱ。こころ、からてやりたい。つよくなりたい。」

父親はあっさりとこう言った。

「いいと思うな。母さん、やらせるか。」

こうして心は、凌空と同じ空手道場に入ることになった。

美紗もまた、2人がやるなら…と空手を始めることにした。

3人は空手を始めた。

そこで出会った男の子が羽須美凌生(はすみりお)だった。

凌生はいきなり3人の仲に入ってきたが、それでも嫌な気はしなかった。

むしろ必要的存在だったような気がする。

わがままな3人をまとめるには、凌生がいなければならなかった。

凌生は幼稚園こそ違うものの、小学校は同じところだと言った。

心は自分を守れるようになりたい一心で空手を続けた。

美紗は心を守れるように空手を続けた。

凌空は男らしくなりたい一心で空手を続けた。

凌生は家が空手道場だから続けることを余儀なくされていて嫌だったが、3人といるようになってからはそんな気持ちはなくなっていた。