「ところで、先ほど私をお呼びになっていたようでしたが、何か御用でしたか。」
ふと思い出したように言いました。
「ええ…」
不意にふられて、思わず口ごもります。
おめでたい話の直後に話すには気が引けますが…しかしここではぐらかしても、かえって不自然でしょう。
「中宮となって、生まれてくる弟か妹の手助けとなってあげることは出来なくなりました。」
どうも言いにくく、遠回りな言い方になってしまいます。
「え…」
乳母は、驚いて色を失っています。
「中宮は、麗景殿宮様です。」
さらに、たたみかけるように言いました。