「さて…新しい奥方様は、右大将様の姉君でいらっしゃいます。

右大将様の御家庭についてはご存知ですか?」

私は黙って頭を振りました。

「まぁ…。

右大将様は、前々々帝の御血筋をひいていらっしゃるのですが、御元服なさるとすぐに御両親が亡くなってしまわれたため、御自分の実力一つでここまで上り詰めていらしたのです。

宮中で右大臣様のお目にかかるようになってからは、右大臣様が御側近く重用なさり、ますます世間に知られるようになられました。

しかし御両親がいらっしゃらないが為に、姉君に相応しい結婚相手が見つからず、我が身の不遇を嘆いた姉君は尼になってしまおうとされたそうです。

それをある晩、宿直(とのい)として右大臣様と取り留めのない話をなさった時に申し上げたところ、右大臣様がお哀れみになって、そのお方に御文を出されるようになったのです。」