―北の方を…? 信じられない気持ちで乳母を見ると、乳母も困ったような顔をしています。 ―今更、新しい母上がいらっしゃるなんて… しかも、あの右大将殿の姉君… 複雑な気持ちを抑えて、「硯を。」と弁に命じました。 弁は、私達の様子を訝しみながらも、硯を取って寄越しました。