「どうなさいました?」

筆が止まってしまった私に、乳母が尋ねました。

乳母なら、どうした方が良いか分かるかもしれない。

でも…恥ずかしい…


「いえ…なんでも。」


そして

『そうは言ってもあなた様のお召しを心から喜ぶ私を、愚かとお笑いになりますか?』

どきどきしながら、仄かな筆跡でそう続けました。


一人の女房に手紙を渡して使いに出し、早く夜になって欲しいとどうしようもない事をもどかしがっていました。