ぐるりーな姫とぐるん

ココは、ぐるぐる王国というところ。そこの王女、ぐるりーなは、キラリン市というところに、行こうとしていました。
なんでかって?それは、隣を視察に行くためです。今度、交流会があるので、その前にどんなところか、確かめるのです。
「ふう、ようやく着いたわ。もう、1時間も歩いたわよ。」
 ぐるりーなは、はあはあ息でいいました。
「姫さま、平気ですか?」
 心配そうに、お手伝いのぐるんがいいました。
「平気なワケないでしょう。はあ…疲れたわ。」
「どこかで休憩しましょうか。」
「うん…」
 ひとまず、ベンチに座って休むことにしました。

 空は雲すこしの晴天です。ベンチの周りは色んな種族でにぎわっていました。
 さすが大都会キラリン市…とぐるりーなは思いました。
 ぐるりーなが王女のぐるりーな王国は、ぐるぐる族はいっぱいいるけど、他の種族はいませんでした。
 ぐるぐる族とは、キラリン市からちょっと離れたぐるぐる王国に住む種族のことです。キラリン族と似ている見た目で、キラリン族よりすこし毛の数が多いんです。そして、みーんなぐるぐるだいすき。
 色んなところに、ぐるぐるがあります。

「姫さま、そろそろ出発しましょう。」
 ぐるんが立ち上がっていいました。
「えっもう?」
 不満そうにぐるりーながいいました。
「もうって、まだココにいるつもりですか?」
「…わかったわ、今行く。」

 しぶしぶぐるりーなは立ち上がりました。
 ぐるんと手を繋いで、また歩きだしました。
しばらく歩くと、ひとつの家が見えてきました。
「あそこね?ココの市長がいるのは…」
 ぐるりーながおずおずとききました。
「そうですよ。姫さま、お行儀よくですよ。」
 ぐるんが笑いながらいいました。
「ちょっと、バカにしてるの?あたし、一応姫よ、王女よ!!」
「ふふ、そうですね。じゃ、姫さま、ドアたたいてください。」
「えっあたしが?」戸惑ってぐるりーながいいました。
「そりゃあ、王女さまがね。」

 ぐるんがまったくたたかないので、仕方なくぐるりーなはドアをトントンとたたきました。
 ガチャッという音がして、中から優しそうな人が出てきました。
「あっ、アナタたちが!」
 その人は目を輝かせました。
「そうです。下見、みたいなものですね。中、入ってもいいですか。」
 ぐるんが固まっているぐるりーなの代わりにいいました。
「どうぞ、どうぞ。」
 まずキラリン市の市長が入り、続いてぐるりーな、ぐるんが入っていきました。

 中はそこまで広くも狭くもありませんでした。真ん中に大きなテーブル、そしてテーブルを囲むイスがありました。イスにぐるりーなは座らせてもらいました。ぐるんは立ったままで、市長はぐるりーなの前に座りました。
「まず、キラリン市に来てくれてありがとうございます。そして、いかがでしたか?」
 市長が優しくききました。
「え、えっと素晴らしいところですね!」
 ぐるりーなは慌てていいました。本当はまだちょっとしかいなくて、わかりません。でも、わからないなんて言えません。
「そうですよね!さすがぐるりーな様ですね。」
「あ、ありがとうございます。」
「で、どうです?交流会、一緒にできそうですか。」
「は、はい。よろこんで」
「ふふ、そうですよね。じゃあ、また明日会いましょう。」

 ぐるりーなとぐるんはイスから立ち上がると、市長にお礼をいって、家を出ました。
「ふう…演技するのって疲れるわ。いちいち相手がどう思うかきにしなくちゃいけないし。」
 帰り道を歩いているとき、ぐるりーながつぶやきました。
「そうですね。でも、私はココが素晴らしいと思いますけど。」と、空を見上げてぐるんが返事しました。
 おどろいてぐるりーなはいいました。「えっ、もうココの魅力がわかったの?」
「観察力があるとすぐにわかりますよ。」
「遠回しにあたしが観察力ないっていってるわね。」
「事実ですよ。」
「むう…」

 会話をしているうち、気がつくともうキラリン市でした。

 ぐるりーなは自分の部屋に着くと、すぐにベットでねむりました。
 新しいところ、人…ぐるりーなはこのふたつでぐったりと疲れていました。

 朝、ぐるりーなはぐるんの声で目を覚ました。
「姫さま、今日はパーティですよ!」ぐるんが陽気な声でいいました。
 ぐるんの言葉に、ぐるりーなは一気に眠気が飛びました。
「うそ、今日だっけ!」
「そうですよ、まさか忘れてたんですか。」
 ぐるりーなは肩をすくめてうなずきました。
「まあ、姫さま、一大イベントをわすれるなんて…とにかく、準備しますよ!」

 朝食を食べたあと、ぐるりーなたちは大忙しでした。ドレスを着たり、持ち物の準備をしたり、家を閉める準備をしたり…。
 出発するころには、ぐるりーなはヘロヘロでした。これからパーティと思うと、泣きたい気分でした。
 一方でぐるんは元気でした。凄いなあ…とぐるりーなは思いました。
 ――
 1時間かけて、キラリン市に着きました。普段ずっと部屋にいるぐるりーなは、身体中が痛みました。
 でも、そんな理由でパーティに参加しないわけにはいきません。頑張って耐えるしかなさそうです。

 パーティ会場に着くと、たくさんの人がいました。それも、色んな種族。ト族、なんで族、もも族、リンルン族、たま族。その中に、昨日会ったキラリン市長もいます。ぐるりーなはぐるんと中に入っていきました。そして、いよいよ、パーティが始まりました。ぐるりーなのお父さん、そしてお母さんが真ん中にいます。マイクを持って、なにやら喋っていました。でも、ぐるりーなはそれどころではありませんでした。
 緊張と不安でどうにかなってしまいそうです。なんとかぐるんと手をつないで、落ち着きました。ぐるりーなの両親が喋りおえると、会場は拍手でつつまれました。そして、その中を両親は堂々と歩きました。ぐるりーなはその様子をただ眺めていました。
「わあ、アナタがぐるりーな様?」
 とつぜん後ろから高い声がしました。ビックリして、ぐるりーなは振り向きました。キラリン族の女の人でした。
「ええ、そうですが…」
「へえ、お若いのねえ。まだ子ども?」
「は、はい。」
「凄いわね!王女なんてー羨ましいわ。」
「あ、ありがとうございます。」

 それからちょっと会話をして、女の人はいなくなりました。
 ぐるりーなはほっとしました。いつまで演技をしなくちゃいけないのか、不安になっていたからです。
「姫さま、この後はステージに立って喋るんですよ。できますか?」
 心配そうにぐるんがききました。
「あたしをなんだと思ってるの。だいじょうぶよ。」ぐるりーなはウインクしてこたえました。
「そうですか?ムリしないでくださいね。」

 ドキドキしながら、ぐるりーなはステージへ立ちました。会場がザワついています。なんていってるのかはわかりませんが、多分いいことではなそうです。マイクをもらって、ぐるりーなは喋りだしました。
「みなさま、今日はパーティに参加してくださり、ありがとうございます。えっと…こうして無事開催できて嬉しいです。…」
 ――次なんていえばいいんだっけ…? ぐるりーなはとつぜん固まってしまいました。会場がよりザワザワしだしました。笑い声もきこえます。早くぐるん来て…とぐるりーなは願いました。ちょうど、今はトイレへ行ってしまっているのです。誰も助けてくれようとしてくれなくて、ぐるりーなはますます不安になりました。――どうしよう、早く思い出さなきゃ…でもどうしても思い出せないよ…
 時だけがずっと過ぎていきます。ようやく、ぐるんがトイレから戻ってきました。それに気づいて、ぐるりーなは心底ほっとしました。ぐるんは会場の様子で、何があったか読み取りました。ぐるんはステージへ立つと、ぐるりーなからマイクを受け取りました。そして、ぐるりーなにもう帰っていいよというサインを送ってくれました。察知したぐるりーなは、人波を潜り抜けて、会場を出ました。外は空気がおいしくて、ぐるりーなは思わず吸いこみました。今まであった不安や緊張がスッと出ていきました。

 一方会場ではぐるんが喋っていました。
 そして、その後すぐにパーティは終わりました。いっせいにみんな外へ出ました。休んでいたぐるりーなは、ビックリしました。そして、ぐるりーなを見た人は必ず悪口をいいました。
「こんな子が王女でいいの?」
「王女失格じゃん。」
「パーティ中逃げだして、お手伝いに言わせるとか、王女としてカスじゃん。」
 きくたび、ぐるりーなの心が傷つきました。
 ――あたしなんて、王女に相応しくないのかも…
「姫さま、どうしましたか。」
 ぐるんが優しくいいました。
「いや、あたしは王女に相応しくないのかなって…。」
 下を見てぐるりーなは返事しました。
「そんなことないですよ。姫さまは立派な王女ですよ。」
「うう…ありがとう、ぐるん。」
「誰かに何かいわれたんですか?」
「いや…だいじょぶよ。ただ、思っただけ。」
「そうですか?」

 ――ぐるんにこれ以上心配かけたくないもん。いえないよ…
 ぐるりーなは、ぐるんと手をつないで家に帰ることにしました。まだ、両親は残るそうです。

 また1時間かけて、歩いて家に着きました。
 部屋に着くと、ベットへ転がりました。
 ――ぐるんはああいってくれたけど、やっぱあたしは王女に相応しくないにかも…。毎日親にも自分を隠していなきゃだし、もう王女でいるの、イヤだな…
 と、思ったその時…。部屋のドアがトントンとノックされました。
「ぐるん?どうぞ入って。」
 でも、こたえた声はぐるんではありませんでした。
「いや、ぐるんではない。とにかく、入るぞ。」

 ガチャッと音がして、ドアが開きました。
「お父さま!えっと、どういうご用でしょう?」
「実はお手伝いのぐるんが引っ越すことになって、お手伝いを辞めることになったんだ。」
 一瞬、ぐるりーなは固まりました。そして我が耳を疑いました。
「えっと、もう一度いってください。」
「だから、ぐるんがココを辞めるんだよ。」
 まだぐるりーなは信じられませんでした。
「どうして、突然引越しなんか…!」
「旦那さんの仕事に都合だそうだ。」
 お父さんの顔を見てみました。真剣です。もう、信じないわけにいきません。ぐるりーなは泣きたいのをグッとこらえました。
「そうなんですか。」
 ぐるりーなはかすれた声でなんとかそうこたえました。
「これだけだ。じゃあな。」
 お父さんは、ぐるりーなの返事も待たないで帰ってしまいました。
 お父さんがいなくなった途端、ぐるりーなの目から涙が出てきました。
 ――ゆういつの本当にあたしでいられる、ぐるんが…ゆういつの味方が…いなくなる?
 ベットの中でぐるりーなは泣き続けました。
 気がつくと、ぐるりーなは寝ていました。夢の中で、ぐるんと喋っていました。
 目が覚めると、もう朝でした。お父さんの声がしました。ガチャッと音がすると、お父さんがいました。
「まだ寝てたのか。もうレッスンの時間だろう?」
 お父さんの声でぐるりーなはガバッと起きあがりました。と、同時にお腹がぐ〜となりました。
「お父さま、お腹すいちゃいました。」
「でも、先にレッスンだ。いいか?」
「どうしてですか?優先するのはお腹の方でしょう?」
 空腹だからか、寝ぼけているのか、ぐるりーなのいい子のお面がとれてしまいました。
「反抗するなんて珍しいな。でも、レッスンが先だ。昨日サボったんだからな!そりゃあ、レッスン優先だ。さ、行くぞ。」
「イヤだ!先、ごはん!」
「はあ…お前は王女なんだぞ?レッスンサボっていいもんか。」
「もうイヤになっちゃう。王女、王女って。あたし、まだ子どもなのよ?王女になんて、生まれたくなかった。」
 ぐるりーなはついに本音をいってしまいました。
「なんだと!」
 お父さんの怒りもマックスになってしまいました。
「そんなこという子はオレの子どもじゃない!出てけっ」
「ふん、こんなとこ出てってやるわよ!」

 お父さんはドアをドンっと閉めていきました。
 一方、ぐるりーなは気分がとてもいいかんじでした。ずっといいたかったことをいえて、スッキリもしました。でも、まずいことになりました。家を出なければなりません。とにかく、最低限の荷物を持って、窓から裏庭へ出ました。
 そして、塀を飛び越えて、行くあてもなく歩きだしました。
 
 
 
 
 
 
もうどれくらい歩いたのでしょうか。ぐるりーなはただ真っ直ぐ進んでいきました。
 そろそろ疲れてきたとき、看板が立っているのが見えました。近づいて見てみると、なんで市と書かれていました。ぐるりーなは、なんで市、というところがあるのは知っていましたが、詳しくは知りませんでした。なので、知らないところへ行くと思うと、すこしワクワクしてきました。なにせ、ずっと部屋にいたにですから。外の世界をあまり知らないのです。なんで市は、自然豊かなところでした。時々、三角屋根の家がポツンとあるくらいで、あまり建物はありませんでした。そして、しばらく歩いていると、なんで族と呼ばれる民族が見えてきました。体はぐるぐる族と一緒ですが、顔が違うのと、毛が生えていません(女の子は一本生えてます)。新鮮な気持ちでぐるりーなは歩き続けました。でも、やっぱり疲れてきました。近くにあった、木陰で休むことにしました。と、ちょうどぐるりーなが座ったタイミングで、誰かも座りました。となりに座った子は、どうやらキラリン族のようでした。ピンクのリボンをしています。
「あ、アナタも休憩?」
 突然リボンの子が話しかけてきました。
「えっ、うん…」
 慌ててぐるりーなは返事しました。
「ココ、ちょうどいい休憩スポットなのよ。」
「へえ…」
 リボンの子がぐるりーなの方をみました。
「アナタぐるぐる族の子?」
「う、うん、そうだよ。」
「あれ?もしかして、ぐるりーな姫?テレビで見たことあるわ。」
 ぐるりーなはギクっとしました。白杖するしかなさそうです。
「う、うんそうよ。ちょっと色々あって、家出してきたの。」
「へえ、王女も大変ね。よかったら、ウチくる?」
「えっいいの!」
「うん。じゃ、案内してあげるわ。ついてきて!」
 リボンの子はスッと立ち上がりました。ぐるりーなも続いて立ち上がりました。
 そしてリボンの子についていきました。

 しばらく歩いていると、ひとつの家が見えてきました。小さい、三角屋根の家でした。
「ココがわたしの家。他にもいるけど。」リボンの子が指していいました。
 リボンの子がドアをトントンとたたくと、中から声がしました。
「はあーい、どうぞ。」
 リボンの子がドアをガチャッと開けました。そして、中に入っていきました。続いてぐるりーなも入りました。
 中は広くて、真ん中に大きなテーブルがありました。そして、周りに色んな子がいました。種族バラバラです。一番に、ト族の子が出てきました。
「あっ、どうも…ぐるりーなです。」
 一応ぐるりーなは自己紹介しました。
「どうも、私はなそでい!よろしくね!」
 なそでいはにっこりしていいもした。
「さ、どうぞ入って!そうだ、うるさいの平気?」
「あ、いや…苦手です…」
「なら、2階にいていいよ。ついてきて!」
 ぐるりーなはなそでいについていきました。2階は静かで、ぐるりーなは落ち着きました。納戸にスペースをつくってもらって、ぐるりーなはそこにいることにしました。なそでいは下へ行ってしまいました。
 たしかに静かで落ち着きますが、だんだんぐるりーなは寂しくなってきました。そして、ぐるんのことを思い出しました。小さいころからずっと一緒にいてくれて、お話してくれました。いくらぐるりーながイヤなことをいっても、優しく受け止めてくれました。本当の自分を愛してくれました。でも、もういません。引っ越してしまったのです。もう、お話できません。途端に、ぐるりーなの目から涙が出てきました。と、その時、ちょうどリボンの子がやってきました。ぐるりーなの姿をみて、ビックリしています。「ちょっと、どうしたのよ!」ぐるりーなは慌てて顔を隠そうとしました。でももう遅いとわかり、隠すのをやめました。静かにリボンの子がとなりに座りました。そして、ささやくようにいいました。「なんでもいって。どうしたの?」ぐるりーなはおそるおそるこたえました。「だいすきなお手伝いさんが、いなくなっちゃって…」
「いなくなった?なんで?」
「引越しちゃったの。旦那さんの仕事の都合で。」
「そっか…それは辛いわね」
「しかも、お手伝いさんは、特別だったんだ。ゆういつ、本当の自分でいられたの。」
 気づいたら、ぐるりーなは本音も明かしていました。まだ会って1日もしていない子に。話おわって、ぐるりーなは我にかえりました。そして、自分がこわくなりました。まだちょっとしか会っていない子に、こんなに喋っちゃうなんて…。
「そうだったのね。でも、ぐるりーな、アナタ本当の自分を他の人にもだしてもいいんじゃない?」
「どうして?いい子でいなくちゃ。」
「逆にどうして?ぐるりーなはぐるりーななのよ。どうして、本当のアナタでいちゃいけないの。」
「ダメよ。本当はわかってるでしょ。王女に相応しくなるには、フリをしなくちゃなのよ!」
「ぐるりーな、“相応しく”ってなに?いい子が相応しいとは、限らないわ。ありのままの方がいいでしょ。」
 だんだん、ぐるりーなはリボンの子にムカついてきました。
「ふつうの子にはわかんないよね!いい子でいなきゃ、悪口いわれるし、嫌われるのよ!憧れる子が多いけど、実際は王女ってブラックなのよ!!」
「わかんないわよ!!でも、わたしはぐるりーなにムリしてほしくない!我慢してほしくない!つくりものの自分がすかれるより、本当の自分が嫌われる方がいいじゃない?」
「どうして、そんなに思ってくれるの?まだ、会って1日も経ってないのに…」
「なんとなくよ。似てるからかもね。」
「似てるって、どこが?」
「うーん、本当の自分隠してるとか?」
「へえ、そうなの?あっそういえば、アナタなんていうの?」
「わたし?丸美よ。」
「よろしくね、丸美。」
 丸美はにっこりして、うなずきました。
「そういえば、もうすぐおやつよ!誘いにきたんだったわ。一緒行きましょ。」
 丸美がいいました。ぐるりーなは返事の代わりにうなずきました。そして、丸美と一緒に下へ行きました。
 
 
下へ行くと、おかしのいい香りがしてきました。大きなテーブルに、お皿がのっていて、更にその上に沢山おかしがのっていました。思わず、ぐるりーなはおかしの方に引き寄せられました。お皿には、クッキーやグミやポテチなどがのっていました。特にぐるりーなが目を輝かせたのは、ロールケーキでした。やっぱり、ぐるぐる族ですから、ぐるぐるがすきなんです。ぐるりーなは、ロールケーキがのっているお皿のそばにあるイスに座りました。丸美はぐるりーなのすぐ横に座りました。もう、他の子は食べてしまったようです。他の子のお皿はなくて、みんな自由に過ごしていました。ふたりで食べることになりました。
「ぐるりーなって、ロールケーキすきなのね。おいしいよね。」
 丸美がいいました。
「うん。ぐるぐる族だからかな?おいしいよね!」
 ぐるりーながこたえました。自分と同じくらいの子と食べるなんて、ぐるりーなは新鮮でした。いつもぐるんや両親と食べたり、パーティでも大人の人ばかりだからです。それに、ぐるりーなは一人っ子なので。加えて、仲良い子なんていうのもいなかったので。
「ねえ、やっぱりぐるりーなの家って広い?」
 丸美がクッキーを食べながらききました。
「うん、広いよ。でも、なんだか落ち着かない。部屋もあたしひとりなのに、だいぶ広いの。」
 ぐるりーながこたえました。
「ふうん、でも狭いよりはいいわよ。」
「そうだけどね、広すぎもイヤよ。」
「王女も大変ねえ〜。」
「うん…本当ね…」
 会話してるうちに、ふたりはおやつを食べおわりました。そして、歯みがきの時は、ぐるりーなは丸美の歯ブラシを使わせてもらいました。
その後は、ぐるりーなはまた2階へ行こうと思いましたが、なんでちゃんという子が遊びに誘ってくれました。丸美、なんで、ぐるりーなの3人で、カードゲームをすることになりました。その中でも、ババ抜きをやることにしました。ぐるりーなはぐるんと何度かやっていたので、ルールがわかりました。(他はやったことないからわかりません)。二戦目をやっていると、なそでいからお風呂の呼びかけが入ったので、ババ抜きは(お風呂を)出てからやることにしました。ぐるりーなは、丸美と入ることになりました。準備をしてから、ぐるりーなは丸美と一緒にお風呂に入りました。ぐるりーなはお風呂が狭くておどろきました。そんなぐるりーなを、丸美は笑って見ていました。誰かとお風呂に入るなんて、これもぐるりーなは新鮮でした。なので、丸美とついいっぱい喋ってしまいました。――楽しいなあ…誰かといるって、こんなにもいいんだ…――とぐるりーなは思いました。あなりにも長く入っていたので、なそでいが注意しにきて、ふたりはようやくお風呂から出ました。お風呂後も、ババ抜きをやりました。中々白熱して、ぐるりーなは楽しみました。(もちろん、丸美やなんでも)。飽きたら、今度はお絵かきをしました。ぐるりーなは意外と、絵が得意なので、ふたりがビックリしていました。あっという間に、ぐるりーなはふたりと仲良くなりました。――家出してきて、よかった…ぐるんのことは悲しいけど、ふたりや、ココのみんなとは出会えてなかった…――しみじみ、ぐるりーなは思いました。そして、夜ごはん、寝る前の時間を過ごして、もう寝る時間。今日は色んなことがあったので、ぐるりーなはぐったりしていました。おふとんに入って目をつぶると、すぐに眠りにつきました。

 ――――――
 もう家出してから、一ヶ月が経ちました。ぐるりーなは、丸美たちと楽しく暮らしています。もう、家のことなんかすっかり忘れてしまいました。ぐるんのことも、もう遠い昔に感じます。でも、やっぱり今でも、ぐるんのことは思い出します。夢に出てくることもありました。――今、ぐるんは引越し先でちゃんとやってるのかな…と、急に心配になってきました。そして、どうすれば連絡できるか考えました。――グルン(LINEみたいなアプリ)?いや、いなかったな…電話?電話番号しらないや…手紙?新しい住所知らないな…――いくら考えても、いいアイディアが思いつきません。お腹が空いているせいかもしれません。とにかくぐるりーなは、おやつを食べることにしました。

 一方そのころ、ぐるぐる王国では、ぐるりーなの捜索がされていました。国の王女がいなくなるなんて、一大事です。ぐるりーなの母も、心配して探していました。そんな中、ひとりだけ心配していないひちがいました。そう、ぐるりーなを追い出した父です。ひとりだけのんきにぼーっとしていました。みんなは、そんな暇もないので、気がついていませんでした。(まあ母は気づいていますけど)。
 とにかく、そんな騒ぎでしたので、ぐるんの方にも情報が入りました。ぐるんの旦那さんはぐるりーなのことがだいすきだったにで、ショックを受けているようでした。ぐるんが自分がいなくなったからかも、というと、ぐるんにぐるりーなの家に戻ってと頼みました。ぐるんは嬉しく思いました。夫婦バラバラにはなっちゃうけど、やっぱり姫さまに戻ってきてほしいし、一緒にいたいのです。ということで、ぐるんは再び城(ぐるりーなの家)に戻ることにしました。家も、前住んでいたところに戻ることにしました。


 ぐるりーながこの情報を受け取ったのは、昨日のことでした。丸美から、教えてもらいました。その時の、嬉しさといったら、表せません。体中喜びに満ちていました。そして、帰るかどうか考えることにしました。もちろん、すぐにぐるんと会いたいのですが、今度は丸美たちと別れることになるのです。そう思うと、すぐには決められませんでした。そして、今日の朝、いよいよ決めました。そして、今からみんなに結果をいうのです。
「みんな、あたし、決めたよ!帰るかどうか。」
 みんながごくりと息をのみました。
「あたし、帰ることにするよ!」
 一瞬場が沈みました。みんな、寂しそうです。特に、なんでは泣きそうになっていました。でもすぐに、みんな笑顔になりました。
「そっか…寂しいけど、よかったね。きっと、ぐるんさんとか、王国のみんな喜ぶよ!」
「元気でね。あたしらのこと、忘れないでね!!」
「思い出に、わたしの一枚くらいイラストもっていってよ。」
 下でマロネコ・アーモンドがミャーと鳴きました。
「みんな、ありがとう。」
 ぐるりーなは 泣くのをこらえていいました。
「で、いつ出発するの?」
 なるほどがききました。
「準備してから、もう出発するよ。」
「そっか。」

 それから、みんなと色々喋りながら準備しました。
 そして、いよいよお別れの時。ぐるりーなは泣きたいのをこらえきれず、泣いてしまいました。なんでも、一緒に泣いていました。
「みんな、ありがとう。そして、さようなら。」
 ぐるりーなはみんなに向かっていいました。
「うん。こちらこそ、ありがとう。そして、さようなら…」
 丸美が泣きたいのをこらえていいました。
 最後に、ぐるりーなはなんでをギュッとしました。そして、他の子とは握手しました。
 そして、いよいよ歩きだしました。丸美たちは、ぐるりーなの姿が見えるまで、手をふりました。
 ぐるりーなも、みんなが見えるまで手をふり続けました。そして、いよいよみんなが見えないところまで来ました。
ひたすら真っ直ぐ進みました。たしか、来たとき真っ直ぐ来た気がするのです。

 その勘は見事当たりました。1時間以上あるいていると、城が見えてきました。さっきまでは寂しい涙でしたが、今は懐かしい涙が出てきました。そして、城の方にかけていきました。

 ぐるりーなは、門のところまで来ました。門番たちは、おどろいているようでした。誰かに伝えるのか、急いで城の中へ入っていきました。ぐるりーなも早足で中へ入りました。中は、何も変わっていませんでした。そりゃそうです、一ヶ月だけですもの。でも、ぐるりーなにとっては、一年ぐらいでした。だから、城がとても懐かしく思えました。そしていよいよ、自分の部屋まで来ました。自分の部屋なのに、ぐるりーなは久しぶりだからか、緊張してきました。ガチャッと音がしてドアが開きました。中はシンとして、誰もいませんでした。あれっ?とぐるりーなは思いました。てっきり、もうぐるんがいると思っていたのです。でも、いませんでした。ぐるりーなは一旦そこは置いておくことにしました。ぶじ、家へ帰ってこられたのです。ぐるりーなは安心感に包まれました。そして、やっぱり、家が落ち着くな…と思いました。
 ベットで寝ようとして、ベットへ近寄った時、ドアがトントンとたたかれました。ぐるりーなはドキッとしました。もしや、お父さま?どうしよう、また追い出されるかも…でも、外からは優しい声がきこえてきました。「姫さま、いらっしゃるのなら、返事してください。」ききおぼえのある声です。
「ぐるん!!」思わずぐるりーなはさけびました。「いるわよ。」
 すると、ドアがガチャッと開きました。そこには、だいすきなぐるんがいました。
 ぐるりーなは嬉しくて泣きそうでした。同じく、ぐるんも嬉しくて泣きそうでした。
 ぐるりーなはぐるんの方に駆け寄りました。そんなぐるりーなを、ぐるんは優しく包みました。
 ぐるんの中で、ぐるりーなはわんわん泣きました。しばらくして、ようやくふたりは離れました。そして、涙も止まりました。落ち着たぐるんは、いつもの調子でいいました。
「姫さまが戻ってきてよかったです。私の旦那も喜ぶと思います。」
「旦那さん、心配でもしてくれてたの?」
 ビックリしてぐるりーながききました。
「ええ、姫さまだいすきなので。それで、私がいなくなったからかもっていったら、私が城に戻ってって頼んできたんですよ。」
「へえ…それは嬉しいわ。」
「まあ、離れた原因、旦那ですけどね。とにかく、王国のみんなも、アナタの両親も喜びますよ。」
 両親ときいて、ぐるりーなはおそるおそるきいてみた。
「お父さまも入ってる?」
「そうですよ。今じゃね。さ、会いにいきましょう。」
「えっ今から?」
「そうですよ。ほら、私についてきてください。」
「わかったわ。」
 本当は休みたかったけど、ぐるんの念に押されて、ぐるりーなは行くことにしました。

 会いに行くと、どちらも喜んでくれました。本当に追い出した本人(父)が喜んでいて、ぐるりーなはおどろきました。今回のことで、父は反省してくれました。他にも休んだあと、国民たちに会ってきたりしました。(ぐるんの旦那さんにも会った。凄い喜んでいた)。夜、ぐるりーなはぐっすり眠りました。意識がもう夢に入りそうな時、ぐるりーなはつぶやきました。
「絶対に、丸美たちのこと、忘れないからねえ…約束だよう…」
もう季節は冬。ぐるぐる王国では、もう雪がふっていました。そんな雪を、王女のぐるりーなは眺めていました。もう丸美たちと別れて、半年が経ちました。今でも、時々あのころのことを思い出します。そして、また会いたいと思うのでした。このことを、両親に相談してみることにしました。
 いざ、相談してみたら、意外とすぐにOKが出ました。ということで、明日に、遊びに行くことにしました。一応、丸美に電話で伝えることにしました。そうそう、連絡したいと思って、電話番号をきいておいているので、丸美とは電話で繋がれるのです。(向こうにも自分の番号を伝えてあります)。
 電話してみると、丸美はすっごく喜んでくれました。そして、来ていいといってもらえました。そして、一つ丸美に頼んでおきました。他の子にはいわないで、とね。やっぱり、サプライズしてこそ、楽しみは倍になりますからね。その日の夜、ぐるりーなも丸美もワクワクしてあまり寝れませんでした。

 いよいよ、ぐるりーなは半年ぶりにみんなに会います。みんなのいる家のドアをたたいてみました。すると、すぐに中から声がしました。「はーい、どうぞ。」ききなれた、丸美の声です。他の子たちの声もします。ぐるりーなが家に上がりました。誰かと確認しにきていたみんなは、ぱあっと顔を輝かせました。
「ぐるりーなちゃん!遊びに来てくれたんだね!」
「久しぶり〜!!」
「えっうそ、ぐるりーなちゃーん!?」
 ぐるりーなは中へ入っていきました。みんなも、一緒に。
 テーブルを囲んで、色んなことをしました。
 最初はやっぱりお喋り。みんなで止まらないくらい、喋りました。
 続いてはカードゲーム。最初に会った時にやった、ババ抜きをしました。
 休憩におやつ。色んなおかしがあって、ぐるりーなは迷いました。結局、無難なクッキーにしました。他にはお城では食べられない、駄菓子とかもあって、ぐるりーなは大コーフンでした。
 最後に、記念に写真を撮りました。
 そんなに遠くないんだから、遊びに行けるじゃんって思いましたね?やっぱり、王女となると、忙しいんです。(父が心変えてスケジュールを減らしても)。だから、今日行けたのはキセキに近いんです。もう来れないかもしれないから、写真を撮っといたってことです。
 そして、あっという間に帰る時間になりました。
「今日は来てくれてありがとう。いつかまた来てね。」
 丸美がいいました。
「うん、絶対!」
 ぐるりーなが返しました。
 今回も、みんなが見えなくなるまで手をふりました。

 家に着くと、ぐるんが迎えに来てくれていました。
 そして、ぐるんと一緒に部屋へいきました。

 あれからも、ぐるりーなは王女として頑張っています。しかし、中々みんなに会いには行けません。でも、手紙なら出せると思って、今も出しています。丸美も、返事をくれたり、向こうからくれたりします。

 離れてたって、友達だよ。心で、通じ合ってるんだから。

 おわり

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