ここのところ、やたらと視線を感じる。
なにか誰かの恨みでも買ったのではなかろうか、と真っ先に考えてしまうあたり、わたしって生粋の日本人だな、と思うけど、どうやらそうではないらしかった。
視線の主が発覚したのはひょんなことだ。
それを感じ始めて1か月経ったころだろうか、退屈な授業中、またあの視線を感じて(他人の視線を感じるのってどういうメカニズムなんだろう?)何気なく教室を見渡したとき、たぶん、相手のほうが完全に油断していて、うっかり目が合ってしまったのである。
これもどういうメカニズムなのかわからないけど、その瞬間、頭のてっぺんからつま先にむけて、いっきに電気を流しこまれた感覚がした。
――おまえか、最近わたしをじろじろ見ているのは。
なぜ瞬時にそう判断するに至ったのか、いま思い返してもわからない。
けれど、咄嗟にそう思ってしまったのは揺るぎない事実だし、目が合うなりがばりと視線を外していった彼の慌てようを見るに、たぶんわたしの直感に誤りはないはずだ。
ここのところ、ずっとわたしにおかしな眼差しを向けてきているのは、伊差優和で間違いない。
優和と書いて“マサカズ”ではなく“ユウワ”と読ませることにご両親のこだわりを感じる。
それでも、悲しいかな、彼のことを下の名前で呼ぶ人物は、この学校にひとりとていなかった。
それはもちろん、わたしも例外でなく。



