身に突き刺さるような風がとめどなく吹いてくる。



「風が体を包む……その冷たさが、冬を奏でているような気がした……か」



冬だよね。

温めてくれるような彼もいないし、この季節は堪えるかも。

かじかむ両手を口元にあて、温かい息を吹き掛けた。


広がっていく白い息が目の前を遮る。

そして拡散していく白い息の中から、一人の人影が見えた。



「あっ。霧島彬、さん」

「ん? あっ、今朝の!」



私は軽く会釈する。



「大丈夫? 風邪引いてない?」

「はい、ありがとうございます」



この寒空の中、一人夜空を見上げて立っていた今回のCMで起用される彼。


私のことを覚えてくれていたみたいで、爽やかな笑顔を振りまき近づいてきた。


そして、目の前まで来ると突然クスクスと笑い始め、視線を向けてきた。



「ってか俺の名前知ってたんだ」



……あっ!

そう言えば、今朝、「新人、か。なら」ってちょっと失礼な発言しちゃったかも。



「あの……」

「あ〜っ、何も気にしないで。確かにまだ無名の新人だからね?」



私が謝るより先に、彼が笑いながら言葉を放ち肩を叩いた。


ちゃんと人のこと見てくれていて優しい人だな。


冷えきった体なのに、彼が触れた部分だけほんわかとした温もりを感じた。