推定180cm以上。

これでも私身長高いはずなのに、頭一つ分飛び抜けてる。

今時珍しい真っ黒で艶のある髪は、ワックスで無造作にセットされている。

少し茶色掛かった切れ長の目に、柔らかい表情を醸し出す口元。

きれいに着こなした服。

その低い声とは裏腹に、体全体から出ているオーラは、温かさに包まれているようだった。



「君、濡れてるよ」



少し見とれていた私に向かって、いともたやすく触れた大きな手。

撫でるように髪を触り、すぐにその手をジャケットのポケットに引っ込めた。


……もう少し触れていて欲しかった。


そう思うほどその手が心地よかった、って何考えてるのよ。

これじゃ欲求不満みたいじゃない、あぁ恥ずかしい……。



「はい、風邪引かないようにね」



目の前の彼は私の手の中に何かを埋め、爽やかな笑顔を残し早々と去っていった。


まるで風のような人。



「ねぇ、何もらったの?」

「ん? 温かい」



何だろ?

手を広げ二人で目を合わせた後、視線を落とした。



「カイロ……?」