「言葉は音と一緒だよ。あの日、綾瀬さんが言っていたこのフレーズに心を動かされたんだ」
「言葉は音……」
「その音に命を吹き込むのは俺ら。俺はどうしてもあのフレーズに命を吹き込んでメロディーを奏でたかった、ただそれだけ」
言うだけ言うと、ビールを音を鳴らしながら豪快に飲んでいった。
私の言葉に音――。
私は何も言葉が見つからず黙っていた。
「俺は、綾瀬さんの夢を語る姿に惹かれたんだけど」
「えっ?」
ようやく発した言葉はさらに私を驚かせる。
そんな私の様子を見て、クスクスと笑っていた。
「あのCM撮りも綾瀬さんのことを思いながら……」
って少し照れ臭そうに言う霧島くんに、心臓が飛び出しそうなほど激しく高鳴った。
まさか。霧島くんが?
予期していなかったことに、どう対処していいのか分からないほど戸惑ってしまう。
「夢は思い描いて何も悪くないだろ? とりあえず、抱き締めてもいい?」
……そうだね、夢は思い描いたっていいんだ。
諦めたらそこまで。
霧島くんが教えてくれた……。
「で、返事は?」
「えっ、あ、どうしよう……」
って、だ、抱き締めたいって?
どさくさに紛れて何言ってるのよ!!
仮にも……。