本当はまずいよね。

今のこの状態がばれたら……私、首かも。


そうは思いつつも霧島くんの言葉に負けてしまい、一件の居酒屋へと着いてきてしまった。

念の為に目深に帽子を被らせ、マフラーで口元を隠してここまで来て、店では個室に通してもらった。



「何かさ、俺、芸能人みたいじゃない?」



個室に着くなり嬉しそうに話しながらジャケットを脱ぎ始めた霧島くんは、早速ビールを頼んだ。

店員さんがいなくなったのを見計らい、私も口を開く。



「何言ってるんですか、もう芸能人でしょう」

「まだ、無名だけど?」



そんな返しに、再び二人で笑い出す。

久々に一緒にいて楽しい、そんな風に思える相手がいたと思えば……。

霧島彬だし、ついてないなぁ。

万が一気になってしまったとしても、報われないこの思い。


まぁ……。
彼の魅力はこのCMをきっかけに世間にあっと言う間に広がる。

私、人を見る目はあるんだから、間違いない。


そう確信しながら他愛のない話で盛り上がった。


私がこの仕事を選んだきっかけや、仕事一色の生活だけど充実していること。

彼がこの業界を選んだ訳など。


それは、私と似たような理由だった。