腹黒王子は隠れボディーガードを無自覚に偏愛する。



「...質問してもいいですか。」

「許可する。」


いやなんか反応薄くない...?



「...私はまだ見習いです。」

「この件はお前の年齢が適している。」



答えになってないよ、お父さん...。

本当は質問攻めしたかったけれど、さすがに人前でそんなことはできない...。



「...二つ目は、...具体的にお願いします。」

「今から話す」



最初に話してください...。




座っていた人が立ち上がって、やんわりとした笑顔で私を見てくる。

その視線がまるで...__見定められているようで...


...失礼だけど、少し怖い。



「失礼、はじめまして。私は執事をしている涼風と申します。」

「...はじめまして、...?」



執事?そんな職業をしている方がどうして...?

依頼、かな......?普通、こういうところは依頼者の代理人が来るはずなのに...。



「詳しくはその方に訊きなさい。」



いや、なんで!?


と、口に出してツッコミそうになる。



「...」



父に無言の圧力をかけられ、申し訳ない気持ちになりながら訊く。



「......その、...仕事内容を...教えてもらいたいです、...」




...すごくたどたどしい口調になってしまった...。

変な奴だって思われたかも...、でも急にボディーガードとかよく分からないし...、


気まずい沈黙が流れると、涼風さんが口を開いて、



「単刀直入に申し上げますと、私の主人の〝隠れボディーガード〟になって欲しいのです。」






***





【腹黒王子は隠れボディーガードを無自覚に偏愛する。 】⇢








私が立っている___すぐ目の前の学校は、一般的に〝お金持ち〟の人たちが通う学校、...翠風(すいふう)学園だ。

昔は、お嬢様学校で、...共学になったらしい。



...私なんかが場違いなところなのに...。

昨日の出来事を思い返す。




***



「単刀直入に申し上げますと、私の主人の〝隠れボディーガード〟になって欲しいのです。」



目の前にいる涼風さんの表情が読めない...。

...どういうこと...?






話を聞くと、どうやら涼風さんの仕えている人は、お金持ちの〝お坊ちゃま〟らしい。


「お坊ちゃまは大変素晴らしくて、学力は申し分なく...」



...こんな感じで語り続ける涼風さんに本題はまだかと訊くのは、...かなり気まずい。

まあ、最初の堅苦しい雰囲気と比べるとこっちの方がマシだけれど...。


...涼風さんって、イメージと違って大分過保護なんだな...。




「お坊ちゃまは、よく事件に巻き込まれることが多いので、いつも私や他の使用人たちが何人か付いていました。」

「なるほど、...?」

「帰りも、学校が終わるとすぐに車をだしていたのですが、...お坊ちゃまは中学校に入ってから、〝迷惑〟だとお話するように...!!」



年齢が近いからかな、...顔も知らない人に親近感を覚える。




「最初はやはり心配で何人か付いていたのですが、ついに最近〝これ以上続けるなら本気で許さない〟と...。私共はただ心配で...!」

「...えっと、...その方、中学二年生なんですよね...?」

「?はい。」



...中学にまで追い掛けてきた人たちに対して二年も我慢するなんて、逆にすごいかも...。

しかも車もだしていたなんて、...好きなことも遊ぶことも何もできない。

私なら、すぐに逃げ出しそう。




その後も涼風さんの話はとまらず、窓から見える空は青から、オレンジ一色に染まっている。


涼風さんのおかげで、守る対象者のことを詳しく知ることができた。

知らなくてもいいこともたくさんあったけど...。あはは...。

かっこよくて、頭が良くて、性格も優しくて、...とにかく、すごいらしい。


そんな人本当にいるのかな...。



「では、早速、契約書を...こちらです。」