超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する

アンセムはドアを閉めて鍵をかけた。
複雑な心境で、すっかり頭が冴えてしまっている。
ベッドですやすやと眠るテラスの元へ行く。
テラスの寝顔を見るのは、今日が初めてだった。

無防備に眠るテラス。
寝顔を見ていると心が和んだ。
ベッドの横に座り込み、テラスに手を伸ばす。
優しく髪に触れた。

「よく寝てる」

そう言えば、今日は研究室の大掃除を手伝うと言っていた。疲れていたのだろう。
テラスの髪を撫でるアンセム。
愛しさで胸がいっぱいになる。
この先、テラスと結婚したら、こうして毎日テラスの寝顔を見ることができるのだ。
2人で生活して、何気無い事で笑って、きっと毎日が穏やかで楽しいだろう。

しかし、その先の想像は困難だった。
「恐い!」と叫ばれたのはついこの間だ。
テラスは頑張ってくれている、そう思う。
きっといつか、自分を受け入れてくれる日が来ると信じたい。

テラスの髪を撫でていたが、アンセムはもっと触りたく思っている自分に気付いた。

(いけないな…)

寝込みを襲うような最低行為は断固としてやってはならない。
アンセムは名残惜しい気持ちを押し殺し、テラスから離れた。
そして本を1冊手に取ると、読書用のスタンドをつけ、部屋の明かりを消し、ソファに横になった。
眠ってしまうのが一番だとわかっていても、どうにも眠れそうにない。
アンセムは本を開き、半ば上の空で文字を追った。