踏み切りが開き、


タクシーが動き始める。


それと同時にアタシ達は、唇を離し…


指を絡ませる。


−−−仁君のアパートはもうすぐだ…。


離れたくない想いから、仁君の手をギュッと握ると…それより強い力で…ギュッっと握り返されて来た…。


仁君も、同じ想いで居てくれるのかな…


タクシーが仁君のアパートの前で止まり、ハザードを点ける…


仁;寄ってく…?


アタシはハッと顔をあげて…


静かに首を横に振る…



まだ…


まだ…


何も解決してないもの。


気持ちだけが大きくなりすぎて…


周りが見えなくなりそうで…


それに…


仁君が今まで遊んできた、他の女の子とは


同じになりたくなくて…



仁;これ…。


差し出された何枚かのお札を手に取り、


じゃあね,と手を振った。


仁君もまた,


じゃあ…


と言いながら手を振った。



アタシ達に、


『またね』


は存在するのだろうか…


きっとお互い,そんな気持ちから…


『またね』


と、口に出来ずに居た。