アタシ達は店員に案内された席に向かい合って腰を下ろした。


すぐに仁君が店員を呼び、飲み物といくつかのツマミを注文する。


仁;あきなちゃんは何飲むの?


あきな;あっ…カシスオレンジで…。


本当はアルコールは飲まないで、仁君がどんな人か…アタシとはどんな気持ちで連絡をとってるか,
色々見極めたかったけど…

さっきの哲平との電話のこともあって…

飲まずにはいられなかった。




頼んだ飲み物が届くまで、2人共無言でタバコを吸っていた…


金曜日とは言え、まだ19時を過ぎたばかりで、
広い店内にもまだ客は少なくて…


仕事帰りかと思われる、サラリーマンが、
上司があぁだとか,こぅだとか…
そんな会話が耳に入ってくる…。


店員;お待たせしました〜♪


飲み物を持って来た店員は若い女の子で…

仁君の顔を見て、

明らかにいつもより1オクターブ高い声だろ?!ってぐらいブリブリに、ビールとカシスオレンジ、お通しをテーブルに置いて行く…


戻り際にはアタシを上から下まで悔しそうに見て行った。


ああ、仁君カッコイイからね…アタシの存在が気になるんだね。


でも残念。

アタシが今つけてるアクセサリーも…ブランド物のバックも…


全部…


哲平からのプレゼント…。



悔しい顔なんてしなくて良かったのに。


−−−だってアタシは…仁君の『彼女』じゃないから…−−−



残念なのは…アタシも同じか…