どいせ自分で片付けなきゃいけないのに、


やるせない気持ちでゴミ箱を蹴り上げた。


アタシはゴミもそのままに、


タバコに火をつけ、ボーっとテレビを見て居た。


お腹の赤ちゃんを堕ろした今…


仁君をつなぎとめるものは何もない。


それは逆に…仁君に執着する意味もないと…わかっていた。


溢れてくる涙が流れないように上を向き…


煙を肺いっぱいに吸い込む…。


なんの涙なんだろ…


別れて楽になればいいのに…


こんなに傷ついてまで…仁君が好き?


ボーっとしたまま台所へ行き…


包丁を手首にあてる…。


この傷を見たら、仁君はどう思うだろう…


アタシだけを見てくれるかな…。



だけど…皮肉にも包丁の切れ味が悪くて…


かと言って、おもいっきり切る勇気なんてなくて…。


身体に傷が残るのが嫌で…


ためらい傷すら残せない自分が


可笑しくなった。


最初っからそんな勇気なかったくせに。


リストカットをすると、気持ちがスーっと軽くなる。とか聞くから


この気持ちから解放されたくて…出来もしない傷をつけようとした。