小説の執筆は、少しずつ少しずつ進んでいく。
春にしてはすごく暑くて、真夏みたいな日差しの本日。
そんな中行われたのが…。
「うう……、憂うつだよ……マラソン大会……」
そう、うちの中学恒例の春のマラソン大会である。
うちは秋に体育祭がある代わりに、春にはマラソン大会があるんだ。
運動が苦手な私は、もう一週間くらい前から今日が憂うつだった。
「桃花、しゃきっとしろ。日頃運動不足なんだから、体育の授業くらいしっかりやれ」
「でも、無理は禁物だよ?」
すみれのきつい言葉に対して、優しい言葉をかけてくれるゆき。
「ありがとう、ゆき……」
「ゆきは桃花を甘やかしすぎだ」
「だって桃花は僕の大切なひとだからね」
王子様スマイルでそんなことを言われて、私の胸がドキっと高鳴る。
そんな私の頬を、すみれが引っ張る。
「ちょ、ちょっとすみれっ!にゃにするにょっ!?」
「デレデレしてるから引きしめてやってるんだろうが」
「デレデレなんてしてないよ~…」
すみれは不機嫌そうに私の頬から手を離す。
すみれはしっかり者というか、お母さん気質というか、私にけっこう厳しい。
ねこの姿のときからツンツンしてたけど、人間になってもそれは変わらないみたい。
「桃花っ!!」
「ひゃあっ!」
急に後ろから抱き着かれて一瞬びっくりしたけれど、この感じにもだいぶ慣れてきた。
「そら!」
「だから桃花に抱き着くなって何度言ったらわかるんだ」
私からそらを引っぺがすすみれ。
この光景も同じくだいぶ見慣れてきた。



