(歌音のモノローグ)
望月さんは理事長の宣言通りに逮捕された。
どうやら動機は「親の威光に耐えかねたから」から、らしい。
彼の親は有名なピアニストで、その子である望月さんもピアニストにと期待されたが、ピアノの腕は学生の域を超えなかった。
だから自分の居場所を確保するために、自分より秀でた才能を持った人を陥れていたのだ。
陽くんの他にも今まで狙われた人は大勢いたようで、余罪についても詳しく調べられているところだ。
……はた迷惑もいいところだとは思うが、正直、親の威光に耐えかねてしまうのは理解できる。
だって私も芸術一家に生まれておきながら、突出した才能を持たなかったから。
期待に押しつぶされ、努力もしなくなっていたら……私も望月さんのようになっていたのかもしれない。
けどそうならなかったのは……陽くんが傍にいてくれたから。
必死に頑張る姿を見ていたから。
そんな人の足を引っ張りたくないと踏ん張ることができたのだ。
だから――。



