2度目の初恋はセレナーデのように



 〇会場のホール
 歌音(かのん)が選抜の開始時間になっても帰ってこなくて探しにきたみりあ。


 みりあ「もう、どこ行ったのよあの子。迷子?」


 トイレを確認してもいなかったから迷子かと思って電話をかけるも出ない。

 仕方がないので軽く辺りを探している。



 と、会場の外から声が聞こえてきたのに気が付く。



 みりあ(……もう選抜が始まるから観客も大方入っているのに?)


 気になったので外に出てみることに。


 会場の外、声のする方へ近づき角からこそっと覗くと、数人の男達がタバコを吸いながら話し込んでいた。
 一目見て田舎のヤンキーという感じだ。


 みりあ(うわ)



 ヤンキー1「女子高生の鞄とるなんて、ほんと卑劣だよなー」


 すぐにその場を去ろうとしたみりあだったが、ふと彼らの会話の内容が耳に届き足を止める。



 ヤンキー2「つーかあの子なんなん?」
 ヤンキー3「久遠(くおん)の彼女っぽいよ」

 ヤンキー1「マジ!? いたんだ彼女。つーかイメージ全然ちげーな」
 ヤンキー2「分かる。あいつ年上の美魔女に飼われてるイメージだったわ」

 ヤンキー3「だはははは! めちゃ分かるわ。ってかちゃんと閉じ込め終わったん?」
 ヤンキー2「おう。こっから一番離れた寮側の物置にな。あそこ、鍵壊れてても誰も気が付かないくらい人通りないし、叫んでも聞こえやしないぜ」

 ヤンキー1「うわ、カワイソー。まあでもこれで望月(もちづき)も気がすむんじゃないか? 俺らは金貰えてラッキーだし」
 ヤンキー2「違いねぇ!」


 ヤンキーたちはタバコを吸い終わると笑いながら去っていった。


 それを顔をゆがめて聞いていたみりあ。
 ヤンキーたちが去ったのを確認して走り出す。


 向かったのは関係者待機場所。




 警備「ちょっと君! 困るよ!」


 みりあは警備の制止も聞かずに控室に乗り込み、奥の方にいた陽暁(はるあき)に叫ぶ。


 みりあ「陽暁! 歌音ちゃんがっ!!」


 陽暁はみりあの叫びを受けて血相(けっそう)を変えた。