「浴衣可愛い」
「ありがとうございます。先輩も花火見に来たんですか?」
「そう。出店で買ってちょっと見たら帰るけど。いちおう受験生だから」
「大変ですね」
チョコバナナを持っている先輩と土手まで歩く。
「三上ちゃんこそ大変だったね。一緒にコンクール出たかった」
「私もです。家原先輩のソロ聴きたかったな」
すぐに失敗だと思った。何気なく言った一言だけど、先に進めなかったから引退している先輩に失礼な気がした。恐る恐る先輩の方を見る。先輩は全然怒っていなかった。
「来年は三上ちゃんたちの番だよ。応援してるから」
まるで夢の中の先輩そのものだった。やっぱり、まだまだ敵わないや。もっともっと頑張ろう。そんな気にさせる力強いエールだ。
「はい。先輩たちの想い、繋いでいきます」
「ちょっと難しいけど、田尻君のこともよろしくね」
それにはさすがに吹き出してしまった。
「はは。大丈夫です。結構話せるようになりました」
「よかった。安心して任せられるよ」
お父さんとお母さんが見えたところで先輩と別れる。先輩は一人で来たらしい。息抜きだからあまり長い時間いられないもんね。
「ただいま」
「おかえり。ちょうど始まるところだよ」
先輩と会えてよかった。何か月も会えないものだと思っていたから。
あと田尻君、三年生からも心配されているよ。でも、私は知っている。彼が陰で努力していることを。素直じゃないからみんなに上手く伝えられないけど、これからは私がどうにか通訳するね。
私と田尻君、合唱への姿勢はとてもよく似ている。ただ、それと同等の熱量を他人に求めるかどうかが違うだけ。田尻君は部員みんなも自分と同じ枠の中に存在させているのだと思う。
人は人、自分は自分。距離感を覚えれば、きっと上手くいく。
「わぁ……ッ」
待ちに待った花火が打ち上がった。周りからも歓声が上がる。大規模なものではないから期待していなかったけど、これはなかなかすごい。距離もわりと近くて迫力がある。
「綺麗だね」
「うん」
お母さんが感慨深げに言う。お母さんの夏は私のお見舞いでいっぱいだったから、迷惑沢山かけちゃったな。
花火自体は三十分くらいで終わった。出店でお土産を買って三人で帰宅する。途中のコンビニで花火を買ってもらった。線香花火が入っているやつ。好きなんだよね。夏休みが終わるまでにやろう。
帰宅後はお風呂に入ってすぐに就寝。
すごい。今日は一度も歌っていない、私。夏前までは考えられなかった。歌わない日を作ると置いていかれると思っていた。誰にとかではない、自分の中の自分自身に。
焦りはあまり無い。私の手を取ってくれる人がいるから。一人でもがかなくていいから。明日から、少しずつ、今までの私を取り戻していこう。
「ありがとうございます。先輩も花火見に来たんですか?」
「そう。出店で買ってちょっと見たら帰るけど。いちおう受験生だから」
「大変ですね」
チョコバナナを持っている先輩と土手まで歩く。
「三上ちゃんこそ大変だったね。一緒にコンクール出たかった」
「私もです。家原先輩のソロ聴きたかったな」
すぐに失敗だと思った。何気なく言った一言だけど、先に進めなかったから引退している先輩に失礼な気がした。恐る恐る先輩の方を見る。先輩は全然怒っていなかった。
「来年は三上ちゃんたちの番だよ。応援してるから」
まるで夢の中の先輩そのものだった。やっぱり、まだまだ敵わないや。もっともっと頑張ろう。そんな気にさせる力強いエールだ。
「はい。先輩たちの想い、繋いでいきます」
「ちょっと難しいけど、田尻君のこともよろしくね」
それにはさすがに吹き出してしまった。
「はは。大丈夫です。結構話せるようになりました」
「よかった。安心して任せられるよ」
お父さんとお母さんが見えたところで先輩と別れる。先輩は一人で来たらしい。息抜きだからあまり長い時間いられないもんね。
「ただいま」
「おかえり。ちょうど始まるところだよ」
先輩と会えてよかった。何か月も会えないものだと思っていたから。
あと田尻君、三年生からも心配されているよ。でも、私は知っている。彼が陰で努力していることを。素直じゃないからみんなに上手く伝えられないけど、これからは私がどうにか通訳するね。
私と田尻君、合唱への姿勢はとてもよく似ている。ただ、それと同等の熱量を他人に求めるかどうかが違うだけ。田尻君は部員みんなも自分と同じ枠の中に存在させているのだと思う。
人は人、自分は自分。距離感を覚えれば、きっと上手くいく。
「わぁ……ッ」
待ちに待った花火が打ち上がった。周りからも歓声が上がる。大規模なものではないから期待していなかったけど、これはなかなかすごい。距離もわりと近くて迫力がある。
「綺麗だね」
「うん」
お母さんが感慨深げに言う。お母さんの夏は私のお見舞いでいっぱいだったから、迷惑沢山かけちゃったな。
花火自体は三十分くらいで終わった。出店でお土産を買って三人で帰宅する。途中のコンビニで花火を買ってもらった。線香花火が入っているやつ。好きなんだよね。夏休みが終わるまでにやろう。
帰宅後はお風呂に入ってすぐに就寝。
すごい。今日は一度も歌っていない、私。夏前までは考えられなかった。歌わない日を作ると置いていかれると思っていた。誰にとかではない、自分の中の自分自身に。
焦りはあまり無い。私の手を取ってくれる人がいるから。一人でもがかなくていいから。明日から、少しずつ、今までの私を取り戻していこう。

