さて、次の日。またしても私は若干の隈をこしらえていた。ちょっとのイベントで寝られなくなるの、絶対改善した方がいい。去年のコンクール前日もあまり寝られなかった。今年は絶対十時間寝る。
毎日の復習もあるから余計寝られなくなるんだよね。いちおう計画通り続けてはいるけれども、身になっているのかは今のところ実感できていない。中間テストの結果次第かな。ああ、中間かぁ。嫌だなぁ。
定期テストがある意味は理解できるけど、絶対に回数が多すぎる。中間終わって一か月後には期末とか全然賛同できない。あ、でも、一回だけだとテスト範囲が倍になるのか。でも、二回あるのはきついよ。しかも、定期テスト以外に県のテストとかもあるし。こっちは成績に関係ないけど、心臓に悪い。
部活をもっとやりたいと思うけれども、中学生の本分は勉学なことは知っている。でも、部活も勉学の一つだ。大人になったらできないことを、青春の一つとして全力でやるのも今しかやれない大切なことだと思う。
あと、定期テスト前一週間部活禁止なのもツライ。歌えない上、一週間勉強三昧とか地獄。家で一人で歌っていてもちょっと違うんだよ。みんなで歌うから楽しいんだよ。
「咲菜、発声だって」
「うん」
立ち上がり、ピアノに合わせて声を出す。ちなみに、発声練習はまだ少し恥ずかしい。誰にも言ったことないけど。歌うのは平気なのに、発声の声を聞かれるのは恥ずかしいのは自分でも不思議。
そうこうしているうちに先生が音楽室に入ってきた。手には紙の束。つまりあれだ。うわ、手汗。
「昨日のアンケートで自由曲が決まったので、楽譜を配るよ。一部ずつ取ってね」
男声の一番端に座っている先輩に束を渡す。心臓をうるさくさせながら楽譜が近づいてくるのを待っていたら、先生がホワイトボードに曲名を書き始めた。わ、ちょ、ネタバレ。いや、もう配られるところだからいいけど。
先生が書き終わるのと同時に楽譜が手元に来た。
曲名は「蝶の旅」。決まったのは一曲目に聴いた曲だった。楽譜を持つ手が震える。
昨日も見たけど、伴奏が凄まじい。これ、かなり難しいよ。ピアニストさん、ごめんなさい。でも、この旋律はとても美しくて、伴奏だけで泣けてきそう。
ソロの部分も確認する。なるほど、ソロの後ろで、アルトが歌詞無しで小さく囁いているのか。寂しさを引き立たせているんだ。
早く練習がしたい。歌ってみたい。ちらりと横を見遣る。パートのみんな、楽譜に集中している。みんな同じだ。
「今日は初めてだから、改めて曲を聴いて、確実楽譜を読み込んでイメージを掴んできてね。課題曲がある程度まとまってきたら、自由曲の音取りも始めます」
「分かりました」
ああ、そうか。そうだよね。二曲同時に進めたらどっちつかずになっちゃうかもしれない。先生は正しい。私がせっかちなだけだった。でも、正直歌いたいです。
昨日から数えて三回目の自由曲を聴く。昨日とは心境が全く違う。これを歌うんだという気になれる。細部を細かく聴き、三声のハモりに注目した。
短調は長調より複雑な和音が多い。私の主観だけど。この曲も主張したい歌詞のところでわざと不協和音使ったりしていて、すごく印象的に映る。
ソロが来た。透き通る、どこか幼さを感じる声。成人女性が歌っているんだと思うけど、しっかり曲の雰囲気を掴んで演じている。やっぱり、歌詞の読み込みって大事だ。
気になったところ、参考になったところを楽譜にメモする。汚い字だけど、読めればいいや。
最初がピアニシモで始まったのに、最後のサビはフォルテシモか。振り幅があってよろしい、大拍手。
約五分の旅は大変素晴らしいものだった。思わず拍手しそうになった手を寸でで止める。一年生に変な人だと思われるところだった。
毎日の復習もあるから余計寝られなくなるんだよね。いちおう計画通り続けてはいるけれども、身になっているのかは今のところ実感できていない。中間テストの結果次第かな。ああ、中間かぁ。嫌だなぁ。
定期テストがある意味は理解できるけど、絶対に回数が多すぎる。中間終わって一か月後には期末とか全然賛同できない。あ、でも、一回だけだとテスト範囲が倍になるのか。でも、二回あるのはきついよ。しかも、定期テスト以外に県のテストとかもあるし。こっちは成績に関係ないけど、心臓に悪い。
部活をもっとやりたいと思うけれども、中学生の本分は勉学なことは知っている。でも、部活も勉学の一つだ。大人になったらできないことを、青春の一つとして全力でやるのも今しかやれない大切なことだと思う。
あと、定期テスト前一週間部活禁止なのもツライ。歌えない上、一週間勉強三昧とか地獄。家で一人で歌っていてもちょっと違うんだよ。みんなで歌うから楽しいんだよ。
「咲菜、発声だって」
「うん」
立ち上がり、ピアノに合わせて声を出す。ちなみに、発声練習はまだ少し恥ずかしい。誰にも言ったことないけど。歌うのは平気なのに、発声の声を聞かれるのは恥ずかしいのは自分でも不思議。
そうこうしているうちに先生が音楽室に入ってきた。手には紙の束。つまりあれだ。うわ、手汗。
「昨日のアンケートで自由曲が決まったので、楽譜を配るよ。一部ずつ取ってね」
男声の一番端に座っている先輩に束を渡す。心臓をうるさくさせながら楽譜が近づいてくるのを待っていたら、先生がホワイトボードに曲名を書き始めた。わ、ちょ、ネタバレ。いや、もう配られるところだからいいけど。
先生が書き終わるのと同時に楽譜が手元に来た。
曲名は「蝶の旅」。決まったのは一曲目に聴いた曲だった。楽譜を持つ手が震える。
昨日も見たけど、伴奏が凄まじい。これ、かなり難しいよ。ピアニストさん、ごめんなさい。でも、この旋律はとても美しくて、伴奏だけで泣けてきそう。
ソロの部分も確認する。なるほど、ソロの後ろで、アルトが歌詞無しで小さく囁いているのか。寂しさを引き立たせているんだ。
早く練習がしたい。歌ってみたい。ちらりと横を見遣る。パートのみんな、楽譜に集中している。みんな同じだ。
「今日は初めてだから、改めて曲を聴いて、確実楽譜を読み込んでイメージを掴んできてね。課題曲がある程度まとまってきたら、自由曲の音取りも始めます」
「分かりました」
ああ、そうか。そうだよね。二曲同時に進めたらどっちつかずになっちゃうかもしれない。先生は正しい。私がせっかちなだけだった。でも、正直歌いたいです。
昨日から数えて三回目の自由曲を聴く。昨日とは心境が全く違う。これを歌うんだという気になれる。細部を細かく聴き、三声のハモりに注目した。
短調は長調より複雑な和音が多い。私の主観だけど。この曲も主張したい歌詞のところでわざと不協和音使ったりしていて、すごく印象的に映る。
ソロが来た。透き通る、どこか幼さを感じる声。成人女性が歌っているんだと思うけど、しっかり曲の雰囲気を掴んで演じている。やっぱり、歌詞の読み込みって大事だ。
気になったところ、参考になったところを楽譜にメモする。汚い字だけど、読めればいいや。
最初がピアニシモで始まったのに、最後のサビはフォルテシモか。振り幅があってよろしい、大拍手。
約五分の旅は大変素晴らしいものだった。思わず拍手しそうになった手を寸でで止める。一年生に変な人だと思われるところだった。

