私たちの目の前に現れたのは、藤崎くんだった。
自分が嫌いな女の子。しかも、大勢とばったり鉢合わせしてしまったからか。
藤崎くんは眉間にシワを寄せると、昴くんファンの女子たちをギロッと睨んだ。
「きみたちってさ、転校生と仲良かったっけ?」
疑うような声に、昴くんファンの女子たちは気まずそうにたじろぎ、冷や汗をかき始める。
でも、すぐに無理矢理笑顔を作って。
「そ、そうなの~! すっかり仲良くなっちゃって」
「これからみんなでガールズトークでもしようって思ってるんだぁ~」
「この前、般若みたいな形相でその転校生のことを追い回していたくせに?」
藤崎くんの鋭いツッコミに、この場の空気がピシッと凍り付く。
「る……、瑠夏くん? 何言って……」
「ちょっと黙っててくれる?」
冷ややかな声で遮った藤崎くんに、彼女たちは青ざめて言葉を詰まらせた。
「有名な話だから知ってると思うけど、俺、女子嫌いなんだよね。特に……」
――えっ、私?
いったん口を閉じた藤崎くんが、ちらっとこちらを一瞥した。
ぞっとするほどのすごみのある目力に見つめられて思わず息を呑んでいると、彼が再び口を開く。
「バレバレな嘘をついて誤魔化したり、集団で一人をいじめるような女はマジで無理」
緊張でぴしっと凍り付いていた空気から、昴くんファンの女子たちの動揺が伝わる。
「ご、ごめんなさ……」
「謝る相手が違うんじゃない?」
女子たちは気まずそうに私に視線を寄こすと、無言のまま一目散に空き教室から逃げ出していった。
私……今、藤崎くんに助けられた……?
なんだか夢でも見ているような気がするけど……って、ぼーっとする前にお礼を言わなきゃ!
一応礼儀としてというのもあるけれど、これ以上黙ってたら『お礼の一つも言えないの?』って嫌味を言われかねないし。
「ふっ……、藤崎くん! 助けてくれてありがとうっ……!」
ドキドキしながらお礼を言うと、藤崎くんは眉をひそめてさっと視線をそらした。
「別に。きみがあまりにも鈍臭いから、見てられなかっただけ」
相変わらずの嫌味攻撃……。でも、藤崎くんには、なんだかんだで困っている人をほっとけない優しさがあるんだな。
「出たよ~、照れ隠し」
御子柴くんがクスクスと笑いながら藤崎くんをからかった。
「瑠夏、本当はものすごく茉紘ちゃんのことを心配してたんでしょ? 彼女にいつも付きまとってたのもそういうこと?」
「はあ⁉ 全然違うから!」
「え? じゃあ、私のことをいつも監視してた理由って何だったの?」
会話の流れに乗って、気になっていたことをストレートに聞いてみた。
藤崎くんは、真っ赤になって固まった。
怒ってるような、恥ずかしがっているような……いろんな感情がごちゃまぜになったような顔でしばく黙り込んでいたけど、やがて観念したようにため息をついて、スラックスのポケットから何かを取り出した。
「……これだよ」
「あっ! これって……」
自分が嫌いな女の子。しかも、大勢とばったり鉢合わせしてしまったからか。
藤崎くんは眉間にシワを寄せると、昴くんファンの女子たちをギロッと睨んだ。
「きみたちってさ、転校生と仲良かったっけ?」
疑うような声に、昴くんファンの女子たちは気まずそうにたじろぎ、冷や汗をかき始める。
でも、すぐに無理矢理笑顔を作って。
「そ、そうなの~! すっかり仲良くなっちゃって」
「これからみんなでガールズトークでもしようって思ってるんだぁ~」
「この前、般若みたいな形相でその転校生のことを追い回していたくせに?」
藤崎くんの鋭いツッコミに、この場の空気がピシッと凍り付く。
「る……、瑠夏くん? 何言って……」
「ちょっと黙っててくれる?」
冷ややかな声で遮った藤崎くんに、彼女たちは青ざめて言葉を詰まらせた。
「有名な話だから知ってると思うけど、俺、女子嫌いなんだよね。特に……」
――えっ、私?
いったん口を閉じた藤崎くんが、ちらっとこちらを一瞥した。
ぞっとするほどのすごみのある目力に見つめられて思わず息を呑んでいると、彼が再び口を開く。
「バレバレな嘘をついて誤魔化したり、集団で一人をいじめるような女はマジで無理」
緊張でぴしっと凍り付いていた空気から、昴くんファンの女子たちの動揺が伝わる。
「ご、ごめんなさ……」
「謝る相手が違うんじゃない?」
女子たちは気まずそうに私に視線を寄こすと、無言のまま一目散に空き教室から逃げ出していった。
私……今、藤崎くんに助けられた……?
なんだか夢でも見ているような気がするけど……って、ぼーっとする前にお礼を言わなきゃ!
一応礼儀としてというのもあるけれど、これ以上黙ってたら『お礼の一つも言えないの?』って嫌味を言われかねないし。
「ふっ……、藤崎くん! 助けてくれてありがとうっ……!」
ドキドキしながらお礼を言うと、藤崎くんは眉をひそめてさっと視線をそらした。
「別に。きみがあまりにも鈍臭いから、見てられなかっただけ」
相変わらずの嫌味攻撃……。でも、藤崎くんには、なんだかんだで困っている人をほっとけない優しさがあるんだな。
「出たよ~、照れ隠し」
御子柴くんがクスクスと笑いながら藤崎くんをからかった。
「瑠夏、本当はものすごく茉紘ちゃんのことを心配してたんでしょ? 彼女にいつも付きまとってたのもそういうこと?」
「はあ⁉ 全然違うから!」
「え? じゃあ、私のことをいつも監視してた理由って何だったの?」
会話の流れに乗って、気になっていたことをストレートに聞いてみた。
藤崎くんは、真っ赤になって固まった。
怒ってるような、恥ずかしがっているような……いろんな感情がごちゃまぜになったような顔でしばく黙り込んでいたけど、やがて観念したようにため息をついて、スラックスのポケットから何かを取り出した。
「……これだよ」
「あっ! これって……」


