「…授業、サボっちゃったね。」
咲子が携帯の時計を見ながら隆史に言った。
「あー…ごめんな。咲子、サボるタイプじゃないのに。」
「ううん、楽しいよ。」
「…え?」
「スリルがあって、楽しい。
私1人じゃ、絶対サボったり出来ないもん。」
「…そっか。
何事も経験、経験。」
咲子は、隆史から目線を外しながら微笑んだ。
「怒られるかな?」
咲子が訊くと、隆史はニカッと笑って言った。
「一緒に怒られようぜ!」
「…うん!」
幸せだった。
人を殺したことも忘れる程、
悪夢も見なくなる程、
私は幸せだった。
人気者の隆史くんを独り占めにできる優越感もあったし、
何より私は彼が好きだった。
一緒に居られることが、何より幸せだった。
こんな幸せが、いつまでも続くと信じていた。
信じて疑わなかった浅はかな私を、私は絶対に許せない。