「だって…汚いもん…。」
「え?」
「あたしっ…汚いっ……!!!」
そう叫ぶ沙良の瞳は涙に濡れていた。
それを見た憂は、沙良の腕を引っ張って自分の方へと寄せ、力強く抱きしめた。
「やっ…!離してっ!!あたし汚…」
「汚くない!!!」
その言葉に、無言で見つめる沙良。
「汚くないから…。」
そう言って、憂は沙良の下唇を親指でなぞり、そっと口付けた。
驚いた沙良は目を閉じるのも忘れ、ひたすら固まっているしかなかった。
ゆっくりと唇を離す憂。
たった数秒が数分に思えた。
「…俺が守ってやるから。」
その優しい眼差しを向けられた沙良は、コクッと大きく頷いた後も、何度か小さく頷いた。
そんな沙良を見て、憂は優しく笑った。
…が、憂の奪った携帯が まだ通話状態にあることを知っているのは、今も ひっそりと携帯を耳に当て、ニヤニヤと不気味に笑う一喜だけだった。