メモを残したアンセムだが、予想通りテラスからのリアクションは皆無。
電話をしてみたが、アンセムとわかった瞬間即切り。
次の日もう一度だけテラスの部屋まで行ってみたが、不在。
何度か遠くにテラスを見つけたことがあったが、アンセムに気付くと脱兎のごとく逃げられた。
避け方が笑ってしまうほどの徹底振りである。
避けられ続けて3日目に立食会があった。
いつも食堂で行われる。
アンセムは久しぶりに開始時刻から参加した。
立食会は午後6時から9時までの3時間で参加必須だが、どこかのタイミングで出席していれば問題ない。
すなわち、3時間ずっと食堂にいれば、テラスに必ず会えるのだ。
食事をしながら適当に過ごすアンセムだが、1人でいるとやたら声をかけられた。
無難に対応しながら、テラスを探しすアンセム。
開始から30分ほど経過したころ、テラスを見つけることができた。
アイリとライキスと一緒だ。
もしかしたら、いつもこの時間だったのかもしれない。
アンセムは終わり際にに来ることが多かった。
生活リズムが違うから、今まで顔を見ることが少なかったのろう。
さて、どうするか。
発見されると逃げられるので、その前に接触しなければならない。
いや…声をかけたらダッシュで逃げられるかもしれない。
アンセムは少し思案し、一度食堂を出て、テラスたちがいる場所に近い入り口から入りなおした。
途中1品料理を手に取り、気づかれないようにテラスの背後から近づく。
(なんか、ストーカーみたいだ)
なんで自分がここまでしなきゃならないんだ。
一瞬そう思ったが、寮長から頼まれた事だから仕方ないと割り切るしかない。
「一緒にいいかな?」
声をかけると、一斉に3人が振り向いた。
「ぐ…げほっげほっ」
突然の出現に驚いたテラスは、口に入っていたものがそっぽに入り盛大にむせた。
「大丈夫!?」
背中をさすって飲み物を渡すアイリ。
(あ~あ~、この反応…)
アンセムは困り果てた。
本気で嫌がられている。
ライキスはアンセムを一瞥した。
「ごめん、驚かせるつもりはなかったんだ」
「食事中まで何なんですか?」
アイリから飲み物を受け取って一口飲み、なんとか落ち着いたテラスは、煩わしそうにそう言った。
逃げようにも食事が途中だから逃げられない。
アンセムに背を向けて、さっさと食べてから逃げようと思った。
「きちんと謝りたいんだ」
「だったら最初からキスなんかしなきゃいいのよ」
アイリが口を挟んだ。
テラスからすべて聞いたのだろう。
「アンセムと違って好きな相手とお互い気持ちを確認してからじゃないとイヤって子もいるのよ!」
「本当に、その通りだと思う」
アイリの言葉を素直に肯定するアンセム。
「わかっててなんでよ?」
より一層イラつくアイリ。
アンセムは肩をすくめて、我関せずと食べ続けているテラスの前に持っていた皿を置いた。
話したい相手はアイリではない。
テラスは食事の手を止め、置かれた皿を見る。
「こういうの、好きかな?」
白身魚のソテー・オレンジソースをじっと見るテラス。
それからちらっとアンセムを見る。
「テラスのために取ってきたんだ」
「…食べる」
「あ~もう!食べ物に弱い!」
思わず嘆いたのはアイリだ。
アンセムは、テラスの向かい側へ移動した。
「この前は本当に申し訳なかった」
そう言ってアンセムは深く頭を下げた。
「オレが一方的に悪い。テラスが怒るのは当たり前だ」
アイリがまたまた口を挟もうとして、ライキスに制される。
テラスは聞いているのかいないのか、黙々と白身魚のソテーを食べていた。
「おいし」
思わず感想が口から漏れる。
やっぱり大好きな味だ。
「良かった」
テラスの反応に笑顔になるアンセム。
「もういいですよ」
食べながらテラスは言った。
「謝られても困るし。元々親しかったわけじゃないし。別にいいじゃないですか」
しかし、なんとも冷たい反応だ。
「オレは、これからテラスと親しくなりたいと思ってる。一緒に過ごした時間は本当に楽しかったんだ」
アンセムは誠心誠意謝罪し、関係修復を訴えた。
なんとか仲直りしたい。
「ごちそーさまでした」
しかし、食べ終わったテラスはアンセムの言葉を最後まで聞かずに席を立った。
「また誘ってもいいかな?」
慌てて言ったアンセムだが、テラスの回答は氷のように冷たいものだった。
「ダメです」
そして、テラスは行ってしまった。
ガックリと肩を落とすアンセム。
「珍しいなぁ。アンセムが必死になる姿は」
ライキスは笑った。
ちょっといい気味である。
「テラスは警戒心が強いネコみたいだな」
顔を上げ感想を述べるアンセム。
「自業自得でしょ!」
アイリはきっぱり言い捨てた。
「アイリ、どうしてテラスはここまで男に興味がないのかな?」
テラスの親友であるアイリに、素朴な疑問をぶつけてみる。
「あらまぁ、アンセム様でもわかりませんか~」
いじめるアイリ。
ほっほっほと笑う。
「わからないんだから、テラスと合ってないってことじゃない?」
「そう言われてもなぁ」
「だいたい、なんでキスなんかしちゃったのよ。そこからしてテラスをわかってない」
「可愛かったから」
バシ!
正直に答えたのに叩かれた。
判断ミスだった自覚はある。
「テラスもアイリもすぐ手が出るタイプだな」
「なんでテラスに拘るんだ?」
ライキスが質問する。
「アンセムなら他にいくらでもいるだろ?ミユウはどうするんだよ」
ライキスとアンセムは特に親しいわけではないが、学年が同じで第三寮に入るまでは割と話す方だった。
アンセムとミユウの仲については、皆が知っていることである。
「拘るわけじゃないよ」
寮長から頼まれたと言うわけにもいかず、返答に困るアンセム。
「テラスは慎重なだけよ。相手がどんな人かわかるまで、簡単に心開かないだけ。きっと恋愛感情を持つのは、充分相手を知ってからよ。
でも、そこまで待てる男って少ないだろうし、親しくなる前に相手の男が恋愛モードに入るから引いちゃうんじゃない?」
「なるほど」
アイリの分析・解説は非常にわかりやすかった。
アンセムは納得する。
「だから、アンセムみたいに軽くキスとかする相手は論外なの!」
睨みつけて言ってやる。
「ありがとうアイリ」
しかし、アンセムから出たのは感謝の言葉だった。
まずは信頼関係を築くことが先決だ。
時間はかかるが、諦めなければどうとでもなるだろう。
「まだテラスにちょっかい出す気なの?」
呆れるアイリ。
「何か理由があるな?」
勘繰るライキス。
「いや、テラスに興味があるだけだよ」
アンセムはしらばっくれた。
「嫌がってるんだからやめなさいよ」
テラスのためを思ってアイリは発言した。
「嫌がることは、もうしないよ」
しかし、アンセムには通じないようだ。
「あのね、もうばっちり警戒されちゃってるんだから手遅れなの」
「すっかり嫌われたもんなぁ」
追い討ちをかけるライキス。
このカップルは連携が強い。
「長期戦かな」
「本当に、どうしてこんなにテラスに拘るの?お見合いのとき、寮長に何か吹き込まれでもした?」
割と鋭いアイリ。
確かに、寮長の頼みごとを達成しなければならないという責任感はある。
テラスが異性に関心を持つよう促すのが自分の役割だ。
もちろん、その対象は自分以外の異性でも問題はない。
それでも、まずは自分に関心を持ってほしいと思う。
もしかしたらムキになっているだけかもしれない。
「さぁ」
アンセムは首をかしげて誤魔化した。
電話をしてみたが、アンセムとわかった瞬間即切り。
次の日もう一度だけテラスの部屋まで行ってみたが、不在。
何度か遠くにテラスを見つけたことがあったが、アンセムに気付くと脱兎のごとく逃げられた。
避け方が笑ってしまうほどの徹底振りである。
避けられ続けて3日目に立食会があった。
いつも食堂で行われる。
アンセムは久しぶりに開始時刻から参加した。
立食会は午後6時から9時までの3時間で参加必須だが、どこかのタイミングで出席していれば問題ない。
すなわち、3時間ずっと食堂にいれば、テラスに必ず会えるのだ。
食事をしながら適当に過ごすアンセムだが、1人でいるとやたら声をかけられた。
無難に対応しながら、テラスを探しすアンセム。
開始から30分ほど経過したころ、テラスを見つけることができた。
アイリとライキスと一緒だ。
もしかしたら、いつもこの時間だったのかもしれない。
アンセムは終わり際にに来ることが多かった。
生活リズムが違うから、今まで顔を見ることが少なかったのろう。
さて、どうするか。
発見されると逃げられるので、その前に接触しなければならない。
いや…声をかけたらダッシュで逃げられるかもしれない。
アンセムは少し思案し、一度食堂を出て、テラスたちがいる場所に近い入り口から入りなおした。
途中1品料理を手に取り、気づかれないようにテラスの背後から近づく。
(なんか、ストーカーみたいだ)
なんで自分がここまでしなきゃならないんだ。
一瞬そう思ったが、寮長から頼まれた事だから仕方ないと割り切るしかない。
「一緒にいいかな?」
声をかけると、一斉に3人が振り向いた。
「ぐ…げほっげほっ」
突然の出現に驚いたテラスは、口に入っていたものがそっぽに入り盛大にむせた。
「大丈夫!?」
背中をさすって飲み物を渡すアイリ。
(あ~あ~、この反応…)
アンセムは困り果てた。
本気で嫌がられている。
ライキスはアンセムを一瞥した。
「ごめん、驚かせるつもりはなかったんだ」
「食事中まで何なんですか?」
アイリから飲み物を受け取って一口飲み、なんとか落ち着いたテラスは、煩わしそうにそう言った。
逃げようにも食事が途中だから逃げられない。
アンセムに背を向けて、さっさと食べてから逃げようと思った。
「きちんと謝りたいんだ」
「だったら最初からキスなんかしなきゃいいのよ」
アイリが口を挟んだ。
テラスからすべて聞いたのだろう。
「アンセムと違って好きな相手とお互い気持ちを確認してからじゃないとイヤって子もいるのよ!」
「本当に、その通りだと思う」
アイリの言葉を素直に肯定するアンセム。
「わかっててなんでよ?」
より一層イラつくアイリ。
アンセムは肩をすくめて、我関せずと食べ続けているテラスの前に持っていた皿を置いた。
話したい相手はアイリではない。
テラスは食事の手を止め、置かれた皿を見る。
「こういうの、好きかな?」
白身魚のソテー・オレンジソースをじっと見るテラス。
それからちらっとアンセムを見る。
「テラスのために取ってきたんだ」
「…食べる」
「あ~もう!食べ物に弱い!」
思わず嘆いたのはアイリだ。
アンセムは、テラスの向かい側へ移動した。
「この前は本当に申し訳なかった」
そう言ってアンセムは深く頭を下げた。
「オレが一方的に悪い。テラスが怒るのは当たり前だ」
アイリがまたまた口を挟もうとして、ライキスに制される。
テラスは聞いているのかいないのか、黙々と白身魚のソテーを食べていた。
「おいし」
思わず感想が口から漏れる。
やっぱり大好きな味だ。
「良かった」
テラスの反応に笑顔になるアンセム。
「もういいですよ」
食べながらテラスは言った。
「謝られても困るし。元々親しかったわけじゃないし。別にいいじゃないですか」
しかし、なんとも冷たい反応だ。
「オレは、これからテラスと親しくなりたいと思ってる。一緒に過ごした時間は本当に楽しかったんだ」
アンセムは誠心誠意謝罪し、関係修復を訴えた。
なんとか仲直りしたい。
「ごちそーさまでした」
しかし、食べ終わったテラスはアンセムの言葉を最後まで聞かずに席を立った。
「また誘ってもいいかな?」
慌てて言ったアンセムだが、テラスの回答は氷のように冷たいものだった。
「ダメです」
そして、テラスは行ってしまった。
ガックリと肩を落とすアンセム。
「珍しいなぁ。アンセムが必死になる姿は」
ライキスは笑った。
ちょっといい気味である。
「テラスは警戒心が強いネコみたいだな」
顔を上げ感想を述べるアンセム。
「自業自得でしょ!」
アイリはきっぱり言い捨てた。
「アイリ、どうしてテラスはここまで男に興味がないのかな?」
テラスの親友であるアイリに、素朴な疑問をぶつけてみる。
「あらまぁ、アンセム様でもわかりませんか~」
いじめるアイリ。
ほっほっほと笑う。
「わからないんだから、テラスと合ってないってことじゃない?」
「そう言われてもなぁ」
「だいたい、なんでキスなんかしちゃったのよ。そこからしてテラスをわかってない」
「可愛かったから」
バシ!
正直に答えたのに叩かれた。
判断ミスだった自覚はある。
「テラスもアイリもすぐ手が出るタイプだな」
「なんでテラスに拘るんだ?」
ライキスが質問する。
「アンセムなら他にいくらでもいるだろ?ミユウはどうするんだよ」
ライキスとアンセムは特に親しいわけではないが、学年が同じで第三寮に入るまでは割と話す方だった。
アンセムとミユウの仲については、皆が知っていることである。
「拘るわけじゃないよ」
寮長から頼まれたと言うわけにもいかず、返答に困るアンセム。
「テラスは慎重なだけよ。相手がどんな人かわかるまで、簡単に心開かないだけ。きっと恋愛感情を持つのは、充分相手を知ってからよ。
でも、そこまで待てる男って少ないだろうし、親しくなる前に相手の男が恋愛モードに入るから引いちゃうんじゃない?」
「なるほど」
アイリの分析・解説は非常にわかりやすかった。
アンセムは納得する。
「だから、アンセムみたいに軽くキスとかする相手は論外なの!」
睨みつけて言ってやる。
「ありがとうアイリ」
しかし、アンセムから出たのは感謝の言葉だった。
まずは信頼関係を築くことが先決だ。
時間はかかるが、諦めなければどうとでもなるだろう。
「まだテラスにちょっかい出す気なの?」
呆れるアイリ。
「何か理由があるな?」
勘繰るライキス。
「いや、テラスに興味があるだけだよ」
アンセムはしらばっくれた。
「嫌がってるんだからやめなさいよ」
テラスのためを思ってアイリは発言した。
「嫌がることは、もうしないよ」
しかし、アンセムには通じないようだ。
「あのね、もうばっちり警戒されちゃってるんだから手遅れなの」
「すっかり嫌われたもんなぁ」
追い討ちをかけるライキス。
このカップルは連携が強い。
「長期戦かな」
「本当に、どうしてこんなにテラスに拘るの?お見合いのとき、寮長に何か吹き込まれでもした?」
割と鋭いアイリ。
確かに、寮長の頼みごとを達成しなければならないという責任感はある。
テラスが異性に関心を持つよう促すのが自分の役割だ。
もちろん、その対象は自分以外の異性でも問題はない。
それでも、まずは自分に関心を持ってほしいと思う。
もしかしたらムキになっているだけかもしれない。
「さぁ」
アンセムは首をかしげて誤魔化した。



