シンは、自分は頭脳が優れているという自覚がずっと前からあった。
第二寮までは、普通にやっていれば成績は簡単に上位をキープでき、男同士の気楽な友人関係も楽しく、ちょっとした優越感を感じながら、毎日快適に過ごしてきた。
それが第三寮に入寮後一変する。
どいつもこいつも恋愛恋愛と一生懸命になり始めた。
自分よりずっと成績が劣る奴が、見た目や、上っ面の会話で女から注目を浴びる。
今まで何の気兼ねもなく、男同士楽しくやってきたというのに、周囲は女の目を気にし始め、前みたいに一緒に馬鹿をやる相手が急にいなくなった。
周りの男友達の変化も戸惑ったが、周囲の女たちからの視線にも戸惑った。
媚びた会話、あるいは値踏みするような目線、甘ったるい声、鬱陶しいアピール。
女に興味がないと言えば嘘になる。
一度興味本位で、誘われるがままにセックスしたこともある。
確かにセックスがもたらす快楽は、夢中になっても不思議はないものだった。
しかし、なぜだろう。終わった後、気持ちが激しく白けた。
そして、その後しばらく相手の女性に付き纏われて、すっかり懲りてしまった。
女は面倒臭い。恋愛はつまらない。
男だ女だと夢中になる周囲と反比例するようにシンは勉学に没頭し、記録的な早さで生物学を習得してしまったのだった。
その過程で、生物学専攻の女子寮生が寮長から外出許可を得たという噂を聞く。
気になって真相を突き詰めると、その人物は1つ年上のテラスという女だとわかった。
なぜ、外出を希望したのか。そして、どうやって許可を得たのか。
強い興味を抱いたが、とくに接点もなく、面識ゼロの相手にいきなり突っ込んだことを聞く勇気もなく、悶々とする日々。
ところが、研究課程で偶然テラスと同じチームになる。
シンにとっては大ラッキー。いろいろ聞いてやろうと思っていた。
その矢先、テラスを含むチームのメンバーとひょんなことから話題は恋愛話になった。
(ああ、またか)
この手の話に興味のないシンは、うんざりしていた。
元々頭の悪い奴は嫌いだったが、生物学の専門分野まで進んだヤツらもやっぱり恋愛に夢中なのかと、白けた気分だった。
しかし、恋愛を否定する自分の発言に同調する人物がいた。
テラスである。
恋愛など面倒臭いと言うと、テラスは「わかる」と共感したのだ。
シンの恋愛に対する感想に頷かれたのは初めてだっため、かなり驚いた。
しかし、話が進むにつれ、テラスにはアンセムという相手がいることがわかった。
そして、偶然にも図書館で2人が抱きあっているところを、目撃してしまった。
なぜだか非常に腹立たしかった。
一度は自分に同調し、「恋愛がわからない」などと言っておきながら、うまくやってるじゃないか。
恋愛に夢中になる女に自分の心中を乱されるのが嫌で、気にしないように努めたのだが…。
無関係でありたいのに、食堂でテラスを見つけてしまった。
テラスは友達数人と食事をしている。
(生意気な女だ)
入寮後、素晴らしい早さで生物学の基礎、応用を習得し、薬草の分野へ進んだシンは、既に成績だけで言えばテラスより上だった。
それなのに、敬う態度がない。せっかく手伝ってやろうと申し出ても拒否してくる。
面白くない。
それでも、外出許可の詳細だけは知りたくて、シンはテラスから話を聞きだそうとした。
しかし、うまくいかなかった。
嘘が下手でわかりやすいくせに口が堅いテラスから、結局何も聞き出すことができなかったのだ。
その話の流れで、またもや恋愛は面倒だという話題になり、やはりここでもテラスは「わかる」とシンに共感する。
白々しくてシンはムカついた。
その辺の女がいかにも夢中になりそうな男に、テラスも結局夢中じゃないか。
そんな思いが胸の奥にあった。
(まるで俺側の人間のような言い方するなよ)
シンは男のことばかり考えて生きているような女は苦手である。
軽蔑していると言ってもいいくらいだ。
そんな女と関わりたくはない。
ならば、テラスにも関わらなければいいのだ。
そう思っているのに、見かけるとどうしてもちょっかい出してしまう。
そして、結局会話が拗れて終了する。
シン自ら切り捨てればいいのに、先に会話を下りるのはいつでもテラスである。
それが不満だった。
不満?寂しいのではないだろうか?
嘘でも「わかる」と同調してくれた相手に、背を向けられたようで。
(寂しい!?冗談じゃねえ!)
シンは自分の思考を中断させた。
第3寮に来てから、シンは急に孤独になった。
周囲の友人達は恋愛に向けて走り出している。シンはどうしても、その波に乗れない。
周りの激変は激しい違和感となって、シンを戸惑わせた。
自分は自分の道を進めばいい。
プライドの高いシンは、そう心から思えない自分を誤魔化すために、恋愛を下に見ることにしたのだ。
恋愛がわからないと自然体で言えるテラス、そして、それに向き合おうとしているテラス。
本当はテラスに憧れ、近づきたいと思っているのだが、シンは自分の感情に気付かないのであった。
第二寮までは、普通にやっていれば成績は簡単に上位をキープでき、男同士の気楽な友人関係も楽しく、ちょっとした優越感を感じながら、毎日快適に過ごしてきた。
それが第三寮に入寮後一変する。
どいつもこいつも恋愛恋愛と一生懸命になり始めた。
自分よりずっと成績が劣る奴が、見た目や、上っ面の会話で女から注目を浴びる。
今まで何の気兼ねもなく、男同士楽しくやってきたというのに、周囲は女の目を気にし始め、前みたいに一緒に馬鹿をやる相手が急にいなくなった。
周りの男友達の変化も戸惑ったが、周囲の女たちからの視線にも戸惑った。
媚びた会話、あるいは値踏みするような目線、甘ったるい声、鬱陶しいアピール。
女に興味がないと言えば嘘になる。
一度興味本位で、誘われるがままにセックスしたこともある。
確かにセックスがもたらす快楽は、夢中になっても不思議はないものだった。
しかし、なぜだろう。終わった後、気持ちが激しく白けた。
そして、その後しばらく相手の女性に付き纏われて、すっかり懲りてしまった。
女は面倒臭い。恋愛はつまらない。
男だ女だと夢中になる周囲と反比例するようにシンは勉学に没頭し、記録的な早さで生物学を習得してしまったのだった。
その過程で、生物学専攻の女子寮生が寮長から外出許可を得たという噂を聞く。
気になって真相を突き詰めると、その人物は1つ年上のテラスという女だとわかった。
なぜ、外出を希望したのか。そして、どうやって許可を得たのか。
強い興味を抱いたが、とくに接点もなく、面識ゼロの相手にいきなり突っ込んだことを聞く勇気もなく、悶々とする日々。
ところが、研究課程で偶然テラスと同じチームになる。
シンにとっては大ラッキー。いろいろ聞いてやろうと思っていた。
その矢先、テラスを含むチームのメンバーとひょんなことから話題は恋愛話になった。
(ああ、またか)
この手の話に興味のないシンは、うんざりしていた。
元々頭の悪い奴は嫌いだったが、生物学の専門分野まで進んだヤツらもやっぱり恋愛に夢中なのかと、白けた気分だった。
しかし、恋愛を否定する自分の発言に同調する人物がいた。
テラスである。
恋愛など面倒臭いと言うと、テラスは「わかる」と共感したのだ。
シンの恋愛に対する感想に頷かれたのは初めてだっため、かなり驚いた。
しかし、話が進むにつれ、テラスにはアンセムという相手がいることがわかった。
そして、偶然にも図書館で2人が抱きあっているところを、目撃してしまった。
なぜだか非常に腹立たしかった。
一度は自分に同調し、「恋愛がわからない」などと言っておきながら、うまくやってるじゃないか。
恋愛に夢中になる女に自分の心中を乱されるのが嫌で、気にしないように努めたのだが…。
無関係でありたいのに、食堂でテラスを見つけてしまった。
テラスは友達数人と食事をしている。
(生意気な女だ)
入寮後、素晴らしい早さで生物学の基礎、応用を習得し、薬草の分野へ進んだシンは、既に成績だけで言えばテラスより上だった。
それなのに、敬う態度がない。せっかく手伝ってやろうと申し出ても拒否してくる。
面白くない。
それでも、外出許可の詳細だけは知りたくて、シンはテラスから話を聞きだそうとした。
しかし、うまくいかなかった。
嘘が下手でわかりやすいくせに口が堅いテラスから、結局何も聞き出すことができなかったのだ。
その話の流れで、またもや恋愛は面倒だという話題になり、やはりここでもテラスは「わかる」とシンに共感する。
白々しくてシンはムカついた。
その辺の女がいかにも夢中になりそうな男に、テラスも結局夢中じゃないか。
そんな思いが胸の奥にあった。
(まるで俺側の人間のような言い方するなよ)
シンは男のことばかり考えて生きているような女は苦手である。
軽蔑していると言ってもいいくらいだ。
そんな女と関わりたくはない。
ならば、テラスにも関わらなければいいのだ。
そう思っているのに、見かけるとどうしてもちょっかい出してしまう。
そして、結局会話が拗れて終了する。
シン自ら切り捨てればいいのに、先に会話を下りるのはいつでもテラスである。
それが不満だった。
不満?寂しいのではないだろうか?
嘘でも「わかる」と同調してくれた相手に、背を向けられたようで。
(寂しい!?冗談じゃねえ!)
シンは自分の思考を中断させた。
第3寮に来てから、シンは急に孤独になった。
周囲の友人達は恋愛に向けて走り出している。シンはどうしても、その波に乗れない。
周りの激変は激しい違和感となって、シンを戸惑わせた。
自分は自分の道を進めばいい。
プライドの高いシンは、そう心から思えない自分を誤魔化すために、恋愛を下に見ることにしたのだ。
恋愛がわからないと自然体で言えるテラス、そして、それに向き合おうとしているテラス。
本当はテラスに憧れ、近づきたいと思っているのだが、シンは自分の感情に気付かないのであった。



