さて、アンセムである。
テラスがタキノリのことで悩んでいた1週間。
アンセムはテラスに会おうとアクションは起こしていたのである。
しかし、ナミルが図書館へ乗り込んでいきなり愚痴ったときのカイの反応で、なんとなく、自分の行動を控えるようになった。
焦る気持ちはゼロではないが、気持ちの押し付けでテラスを悩ませるのは不本意だったからだ。
淡々と日々を過ごしていたが、突然アイリから呼び出しがあった。
用件は聞いていないが、テラスに関係することだろうか。
約束の時間に指定された談話室に行くと、既にアイリが待っていた。
「ど~も~」
アンセムに気付いて、ソファに座っていたアイリが手をひらひらと振って挨拶する。
アンセムも手を上げて挨拶を返した。
「話ってなにかな?」
そして、アイリの向かいのソファに座る。
「朗報があるわよ」
アイリはにやりと笑った。
「朗報?」
「テラスがタキノリと別れたの」
アンセムは目を見開いた。
その姿をどこか嬉しそうに見るアイリ。
「アンセム、どうする?」
「どうするって言われてもな…」
「あら、嬉しくないの?」
「嬉しいというか、ホッとはしたけど、オレがテラスに避けられてるのはタキノリが原因じゃないみたいだからな…」
「そっか、もっと前からだもんね。本当に、どうしてテラスはアンセムを避けるのかしら?」
「さぁ」
アンセムは首をかしげるしかない。
「本当に避けられる原因、検討もつかないの?」
「ああ」
頷くアンセム。
「ならば…」
アイリはソファから立ち上がり、窓のカーテンに近づく。
シャッ!
そして、カーテンを一気に開けた。
「本人に聞いてみたら?」
そこにはテラスがいた。
想定外の展開に、アンセムは一瞬動きがとれなかった。
ただ、テラスから目が離せない。
「アイリ、はめたな」
アイリを睨むテラス。あまり恐くない。
「だって、埒があかないから」
テラスを見事にハメたアイリは全く悪びれない。
昼食後にテラスを談話室に誘い、いつものように他愛のない会話をしながら時間をつぶし、談話室の窓からアンセムが見えたタイミングで「あれってアンセムじゃない?」と言って、テラスが確認する隙もなくカーテンの奥に追いやったのだ。
カーテンの奥でアイリとアンセムの話を聞き、初めてテラスはハメられたことに気づいた。
「余計なことだってわかってるけど、アンセムは真剣よ。
何も言わずに逃げるだけって、あまりにも誠意がないんじゃないかな?
せめて、避ける理由くらい教えてあげてもいいんじゃない?」
アイリの正当すぎる意見に、言葉に窮すテラス。
「私、外で待ってるから、2人でちゃんと話した方がいいと思うの」
そしてアイリは部屋を出ようとしたが、アンセムに呼び止められた。
「アイリ、気持ちは嬉しいけど、こういうのはいいよ」
「なんでよ」
思わず食ってかかるアイリ。
「テラスが困ってるから」
「何甘いこと言ってんのよ」
「いいんだ」
「…もうっ!」
アンセムの優しさにイライラするアイリ。
テラスは居た堪れない気持ちになった。
何でこんなことになっちゃったんだろう。
「ごめんなさい」
一言小さく呟いて、テラスは談話室を飛び出した。
残されたアンセムとアイリは、2人してため息をつく。
「なぁに?何があったの?」
そこへ、開け放された戸から話しかける人物がいた。
「ミュウ…」
そう。ミユウだ。
「なんだか久しぶりね」
ミユウは柔らかい笑顔を見せる。
アンセムとミユウが言葉を交わすのは、別れた夜以来だ。
お互い姿を見かけることはあったが、声をかけることはなかった。
「出て行ったのはテラスよね?ケンカでもしたの?」
ミユウは別れる前と同じ口調で話している。少し時間が経ち、立ち直ってきたのだ。
「いや、ケンカというか…避けられてるだけだよ」
だから、アンセムも以前と同じように接した。
「避けられてるの?どうして?」
「さぁ」
「さぁって、わからないの?」
「ああ」
「なによ、それ」
納得いかないミユウ
断腸の思いで別れを受け入れたのに、うまくいってくれなければ別れた甲斐がないではないか。
「なにって言われてもな」
困った顔をするアンセム。
「いつ頃から?何かしたの?」
「何かしたのかな…。もうそろそろ避けられ続けて2ヶ月位経つんじゃないかな」
「2ヶ月も?」
驚くミユウ。
「本当に心当たりないの?」
「ああ…」
「だって2ヶ月って…」
かなり長期間じゃない、と言おうとしてミユウは気付いた。
2ヶ月前と言えば、自分がテラスに「アンセムに近づかないでほしい」と訴えた頃ではないか。
「まさか…」
思わず独り言が出る。ミユウの表情が変わった。
「どうした?」
アンセムの問いかけに応えず、ミユウは談話室を飛び出した。
またも取り残されるアンセムとアイリ。
「何かあったのかな?」
やっと言葉を出すアイリだったが、アンセムは首を傾げるだけだった。
テラスがタキノリのことで悩んでいた1週間。
アンセムはテラスに会おうとアクションは起こしていたのである。
しかし、ナミルが図書館へ乗り込んでいきなり愚痴ったときのカイの反応で、なんとなく、自分の行動を控えるようになった。
焦る気持ちはゼロではないが、気持ちの押し付けでテラスを悩ませるのは不本意だったからだ。
淡々と日々を過ごしていたが、突然アイリから呼び出しがあった。
用件は聞いていないが、テラスに関係することだろうか。
約束の時間に指定された談話室に行くと、既にアイリが待っていた。
「ど~も~」
アンセムに気付いて、ソファに座っていたアイリが手をひらひらと振って挨拶する。
アンセムも手を上げて挨拶を返した。
「話ってなにかな?」
そして、アイリの向かいのソファに座る。
「朗報があるわよ」
アイリはにやりと笑った。
「朗報?」
「テラスがタキノリと別れたの」
アンセムは目を見開いた。
その姿をどこか嬉しそうに見るアイリ。
「アンセム、どうする?」
「どうするって言われてもな…」
「あら、嬉しくないの?」
「嬉しいというか、ホッとはしたけど、オレがテラスに避けられてるのはタキノリが原因じゃないみたいだからな…」
「そっか、もっと前からだもんね。本当に、どうしてテラスはアンセムを避けるのかしら?」
「さぁ」
アンセムは首をかしげるしかない。
「本当に避けられる原因、検討もつかないの?」
「ああ」
頷くアンセム。
「ならば…」
アイリはソファから立ち上がり、窓のカーテンに近づく。
シャッ!
そして、カーテンを一気に開けた。
「本人に聞いてみたら?」
そこにはテラスがいた。
想定外の展開に、アンセムは一瞬動きがとれなかった。
ただ、テラスから目が離せない。
「アイリ、はめたな」
アイリを睨むテラス。あまり恐くない。
「だって、埒があかないから」
テラスを見事にハメたアイリは全く悪びれない。
昼食後にテラスを談話室に誘い、いつものように他愛のない会話をしながら時間をつぶし、談話室の窓からアンセムが見えたタイミングで「あれってアンセムじゃない?」と言って、テラスが確認する隙もなくカーテンの奥に追いやったのだ。
カーテンの奥でアイリとアンセムの話を聞き、初めてテラスはハメられたことに気づいた。
「余計なことだってわかってるけど、アンセムは真剣よ。
何も言わずに逃げるだけって、あまりにも誠意がないんじゃないかな?
せめて、避ける理由くらい教えてあげてもいいんじゃない?」
アイリの正当すぎる意見に、言葉に窮すテラス。
「私、外で待ってるから、2人でちゃんと話した方がいいと思うの」
そしてアイリは部屋を出ようとしたが、アンセムに呼び止められた。
「アイリ、気持ちは嬉しいけど、こういうのはいいよ」
「なんでよ」
思わず食ってかかるアイリ。
「テラスが困ってるから」
「何甘いこと言ってんのよ」
「いいんだ」
「…もうっ!」
アンセムの優しさにイライラするアイリ。
テラスは居た堪れない気持ちになった。
何でこんなことになっちゃったんだろう。
「ごめんなさい」
一言小さく呟いて、テラスは談話室を飛び出した。
残されたアンセムとアイリは、2人してため息をつく。
「なぁに?何があったの?」
そこへ、開け放された戸から話しかける人物がいた。
「ミュウ…」
そう。ミユウだ。
「なんだか久しぶりね」
ミユウは柔らかい笑顔を見せる。
アンセムとミユウが言葉を交わすのは、別れた夜以来だ。
お互い姿を見かけることはあったが、声をかけることはなかった。
「出て行ったのはテラスよね?ケンカでもしたの?」
ミユウは別れる前と同じ口調で話している。少し時間が経ち、立ち直ってきたのだ。
「いや、ケンカというか…避けられてるだけだよ」
だから、アンセムも以前と同じように接した。
「避けられてるの?どうして?」
「さぁ」
「さぁって、わからないの?」
「ああ」
「なによ、それ」
納得いかないミユウ
断腸の思いで別れを受け入れたのに、うまくいってくれなければ別れた甲斐がないではないか。
「なにって言われてもな」
困った顔をするアンセム。
「いつ頃から?何かしたの?」
「何かしたのかな…。もうそろそろ避けられ続けて2ヶ月位経つんじゃないかな」
「2ヶ月も?」
驚くミユウ。
「本当に心当たりないの?」
「ああ…」
「だって2ヶ月って…」
かなり長期間じゃない、と言おうとしてミユウは気付いた。
2ヶ月前と言えば、自分がテラスに「アンセムに近づかないでほしい」と訴えた頃ではないか。
「まさか…」
思わず独り言が出る。ミユウの表情が変わった。
「どうした?」
アンセムの問いかけに応えず、ミユウは談話室を飛び出した。
またも取り残されるアンセムとアイリ。
「何かあったのかな?」
やっと言葉を出すアイリだったが、アンセムは首を傾げるだけだった。



