3人は食事終え、それぞれ部屋に戻った。
一度自室へ戻ったタキノリだったが、どうしてもテラスの様子が気になる。
部屋で悶々としても仕方がないので、テラスの部屋を訪れることにした。
その道中にある休憩室で、ぼんやりしているテラスを偶然見つける。
「何やってるんだ?」
タキノリは声をかけた。
「タキノリこそ、なんでここに?」
「昼飯のとき様子が変だったから、テラスの部屋に行こうとおもったら見つけた」
そう言いながらタキノリはドリンクコーナーでコーヒーを2つ作り、テラスの隣に座った。
「ほら」
「ありがと」
タキノリからコーヒーを受け取るテラス。
「何かあったんだろ?」
「え?何かって?」
誤魔化そうとするテラス。人に話すような内容ではない。
これは自分だけの問題ではないのだ。
「ふ~ん…」
明らかにうろたえるテラスを見て、タキノリはため息1つ。
「アンセムさんと、何かあったのか?」
単なる勘で聞いてみる。
「な、なんで!?」
「あったんだな…」
本当にテラスはわかりやすい。
「俺で良ければ、話聞くけど」
「大丈夫」
即断られて、少しムッとするタキノリ。
「なんだよ、話せない内容なのかよ」
「そうじゃないけど、恋愛って難しいねって思って」
コーヒーを見ながらつぶやくテラス。
「ちょっと前から随分と恋愛に興味が出てきたみたいじゃねーか」
「そうかな?…そうかも」
アンセムと知り合ってから恋愛に絡んだことに巻き込まれてばかりだから、考える機会が増えたのかもしれない。
「ねぇ、タキノリはまだ本当に好きな相手と出会ってないんだよね」
「あ?ああ、そうだけど」
「それって、少し焦らない?」
タキノリは驚いてテラスを凝視した。
「テラス、焦ってるのか?」
「う~ん、さっきライキスと話をして、初めて『これでいいのか』って思っちゃったんだよね…」
渋い顔のテラス。
「何がだよ」
「みんな、真剣に好きな相手を探してるんでしょう?
私は、今まで恋愛ってわからないし、なるようになるって思ってたんだけど、それって、問題から逃げてただけなのかなーとか、思っちゃってさ」
「好きな相手なんて、努力じゃ見つからねーと思うけどな」
「うん…それはそうなんだけど。じゃぁ、どうしたらいいと思う?」
そういってタキノリを見るテラスの目は、とても不安そうだった。
こんなテラスを見るのは初めてだ。
「あーもう止め止め!」
タキノリは立ち上がった。
「な、何が?」
「そんなの考えてもしかたねーって言ってんの」
「ええ~!?」
「ライキスも言ってただろ。好きな相手がいたら、自分止められねーんだよ。考えるより、きっと行動しちゃうんだろ。
今テラスは考えてだけで行動してねーんだから、好きな相手はいないってことだ!
いないもんを考えてもしかたねーだろ」
一気に言われて、テラスはあっけにとられる。
「らしくねーぜ。何があったか知らねーけど、あんまり自分を見失うなよ。
人に流されるようなヤツじゃねーだろ、テラスは」
「うん…」
「よし!遊ぶぞ!」
タキノリはテラスの腕を掴んで立ち上がらせた。
「遊ぶ?」
「悩んだときは、思いっきり遊んで笑え。俺が付き合ってやる。
とりあえず、中央の遊戯施設へ行こう!」
「……それって、タキノリが遊びたいだけでしょ」
「いーからいーから」
そして2人は中央施設へ向かった。
中央施設の遊技場には様々なスポーツやレジャー施設がある。
タキノリとテラスは、目に入ったものから順に片っ端から遊び倒した。
たくさん体を動かし、たくさん笑った。
そのうちお腹がぺこぺこになり、2人は寮に戻ってそのまま一緒に食堂で夕食を食べた。
お互い汗臭いのだが、そんなことを気にし合う仲ではない。
お腹がいっぱいになると、テラスはなんだかとても元気になった。
この1週間のモヤモヤが晴れたようだった。
「ありがとう、タキノリ」
笑顔でお礼を言う。
タキノリも、テラスの笑顔を見て安心する。
やはりテラスは笑顔でなければ、そう思う。
「後はシャワー浴びて寝るだけだな」
ニカっと笑ってタキノリは答えた。
そして2人は食堂を出る。二人の部屋は階が違うが、階段まで一緒に歩いた。
「じゃぁ、またね」
笑顔で手を振るテラス。
タキノリは急に別れが名残惜しくなった。
「テラス」
階段を上ろうとするテラスを思わず呼び止める。
「なに?」
振り返るテラス。
「あのさっ」
自分は何を言おうとしているんだろう。
呼び止めた自分に驚きつつも、思いついた言葉を続ける。
「テラスは恋愛について考えるようになったんだろ?」
「うん。でもやめた」
「止めた!?」
「うん。タキノリの言ったこと、もっともだなって思ったし。
考えるより行動するようになるまでは、考えても仕方ないかなって」
テラスは清々しい顔をしていた。
「そ、そうか…」
「タキノリが一緒に遊んでくれて、なんだか吹っ切れちゃった。今日は本当にありがとうね」
そして最高の笑顔をタキノリに向けた。
「テラス、俺と付き合ってみる気ねーか?」
「は?」
テラスはきょとんとする。
(は!)
タキノリは自分の発言に驚く。
「どこか、行きたい場所あるの?」
「いや、その付き合うじゃなくって」
思わず突っ込みを入れるタキノリ。
(って、俺何言ってんだ???)
「冷静になれ…冷静に…」
「独り言?」
不気味そうにタキノリを見るテラス。
「いや、付き合うっつーのは、あれだ」
自分の発言に収拾がつかず、支離滅裂になるタキノリ。
「あれって?」
「男と女のってやつだ」
「はぁ!?」
「な、なんだよ、イヤならいーけど」
「なんでそういう話の流れになるかな?」
あまりにも唐突な提案に、テラスは呆れ気味だ。
「勢いだ、勢い。
俺も恋愛よくわかんねーし、でもテラスのことは、考えてみれば今一番好きな女だし。テラスも俺のことそう思ってくれてるなら、試しに付き合ってみるのも、ありかなって思っただけだよ」
「試しにって、そんないい加減な…」
「とりあえず、今日みたいに遊ぶ日増やしてみねーか?楽しいし!お試し的な?」
言い切ってからタキノリは床に座り込んで床を見つめる。
(何言ってんだ俺はーー!!)
心の中で、自分に激しく突っ込みを入れる。断られる覚悟を決めた。
そんなタキノリを困ったように見るテラス。
そして大きなため息をついた。
「ま、いっか」
「ああ、そーだろーな。…って、え!?」
意外過ぎる返事に、タキノリはテラスを見上げた。
テラスはタキノリの前にしゃがんで言葉を続ける。
「付き合うとかわかんないけど、また遊びに行こう。楽しかったし!」
「マジ!?」
「今までだって何度も2人で遊んでたでしょ」
「いいのか?俺で」
「お試しでしょ。考えるより、まず実行ってね。
タキノリみたいな感じで言われると、私も気が楽だし」
テラスは立ち上がる。
「そうそう、お試しだ」
タキノリも立ち上がった。
(い~やった~---!)
まさかOKされるとも思わなかったので、心の中でガッツポーズのタキノリ。
「じゃぁとりあえず、明日!…は俺がダメだから明後日は?」
「えっと、いいよ。大丈夫」
「よし!じゃぁ明後日10時迎えに行く」
「わかった」
「じゃ、またな!」
「うん。おやすみ」
そして2人は笑顔で別れた。
(うわー、なんか勢いで凄い展開になったぞ)
足取りも軽く、タキノリは自室へ向かった。
自分の口から出た発言にもビックリだったが、受け入れてもらえたことにもビックリだった。
付き合うと言っても友達関係の延長なのだが、タキノリの心はとても弾んでいた。
明後日はテラスと何しよう?どこへ行こう?
考えるだけでも楽しくて、やりたいこともたくさんあり、何をするか決めかねてしまう。
思えばテラスとは最初から話が弾んだ。
ノリが似ているというか、一緒にいてとても楽だった。
今までテラスは恋愛に興味がなく、タキノリもそんなテラスを恋愛対象として見ようとも思わなかった。
異性というより、むしろ同性に近い存在だったのだ。
ところが、ここ最近のテラスの変化が、タキノリの気持ちにも変化をもたらした。
アンセムの登場も、大きかった。
今まで恋愛市場に参加していなかったテラスだったが、アンセムと関わるようになり、半ば強制的に考えるようになったのかもしれない。
まるでアンセムがテラスを変えているようで、なんだか面白くなかった。
そういう自分の感情を気にしないようにしていたが、自分でも思いも寄らないことをテラスに言ってしまう。
無自覚だったテラスへの好意が言葉に出たのだろう。
テラスのことは好きだ。
テラスもタキノリのことが好きだと言ってくれた。
それは友人としてだが、自分には違う想いがあるのかもしれない。
今の気分の高揚は、やはりテラスを異性として好きということなのだろうか。
わからない。
わからないけど、楽しいならいいじゃねーか。
それが、タキノリの考え方だった。
楽観主義。
今のテラスには、そんなタキノリの存在が嬉しいだろう。
一度自室へ戻ったタキノリだったが、どうしてもテラスの様子が気になる。
部屋で悶々としても仕方がないので、テラスの部屋を訪れることにした。
その道中にある休憩室で、ぼんやりしているテラスを偶然見つける。
「何やってるんだ?」
タキノリは声をかけた。
「タキノリこそ、なんでここに?」
「昼飯のとき様子が変だったから、テラスの部屋に行こうとおもったら見つけた」
そう言いながらタキノリはドリンクコーナーでコーヒーを2つ作り、テラスの隣に座った。
「ほら」
「ありがと」
タキノリからコーヒーを受け取るテラス。
「何かあったんだろ?」
「え?何かって?」
誤魔化そうとするテラス。人に話すような内容ではない。
これは自分だけの問題ではないのだ。
「ふ~ん…」
明らかにうろたえるテラスを見て、タキノリはため息1つ。
「アンセムさんと、何かあったのか?」
単なる勘で聞いてみる。
「な、なんで!?」
「あったんだな…」
本当にテラスはわかりやすい。
「俺で良ければ、話聞くけど」
「大丈夫」
即断られて、少しムッとするタキノリ。
「なんだよ、話せない内容なのかよ」
「そうじゃないけど、恋愛って難しいねって思って」
コーヒーを見ながらつぶやくテラス。
「ちょっと前から随分と恋愛に興味が出てきたみたいじゃねーか」
「そうかな?…そうかも」
アンセムと知り合ってから恋愛に絡んだことに巻き込まれてばかりだから、考える機会が増えたのかもしれない。
「ねぇ、タキノリはまだ本当に好きな相手と出会ってないんだよね」
「あ?ああ、そうだけど」
「それって、少し焦らない?」
タキノリは驚いてテラスを凝視した。
「テラス、焦ってるのか?」
「う~ん、さっきライキスと話をして、初めて『これでいいのか』って思っちゃったんだよね…」
渋い顔のテラス。
「何がだよ」
「みんな、真剣に好きな相手を探してるんでしょう?
私は、今まで恋愛ってわからないし、なるようになるって思ってたんだけど、それって、問題から逃げてただけなのかなーとか、思っちゃってさ」
「好きな相手なんて、努力じゃ見つからねーと思うけどな」
「うん…それはそうなんだけど。じゃぁ、どうしたらいいと思う?」
そういってタキノリを見るテラスの目は、とても不安そうだった。
こんなテラスを見るのは初めてだ。
「あーもう止め止め!」
タキノリは立ち上がった。
「な、何が?」
「そんなの考えてもしかたねーって言ってんの」
「ええ~!?」
「ライキスも言ってただろ。好きな相手がいたら、自分止められねーんだよ。考えるより、きっと行動しちゃうんだろ。
今テラスは考えてだけで行動してねーんだから、好きな相手はいないってことだ!
いないもんを考えてもしかたねーだろ」
一気に言われて、テラスはあっけにとられる。
「らしくねーぜ。何があったか知らねーけど、あんまり自分を見失うなよ。
人に流されるようなヤツじゃねーだろ、テラスは」
「うん…」
「よし!遊ぶぞ!」
タキノリはテラスの腕を掴んで立ち上がらせた。
「遊ぶ?」
「悩んだときは、思いっきり遊んで笑え。俺が付き合ってやる。
とりあえず、中央の遊戯施設へ行こう!」
「……それって、タキノリが遊びたいだけでしょ」
「いーからいーから」
そして2人は中央施設へ向かった。
中央施設の遊技場には様々なスポーツやレジャー施設がある。
タキノリとテラスは、目に入ったものから順に片っ端から遊び倒した。
たくさん体を動かし、たくさん笑った。
そのうちお腹がぺこぺこになり、2人は寮に戻ってそのまま一緒に食堂で夕食を食べた。
お互い汗臭いのだが、そんなことを気にし合う仲ではない。
お腹がいっぱいになると、テラスはなんだかとても元気になった。
この1週間のモヤモヤが晴れたようだった。
「ありがとう、タキノリ」
笑顔でお礼を言う。
タキノリも、テラスの笑顔を見て安心する。
やはりテラスは笑顔でなければ、そう思う。
「後はシャワー浴びて寝るだけだな」
ニカっと笑ってタキノリは答えた。
そして2人は食堂を出る。二人の部屋は階が違うが、階段まで一緒に歩いた。
「じゃぁ、またね」
笑顔で手を振るテラス。
タキノリは急に別れが名残惜しくなった。
「テラス」
階段を上ろうとするテラスを思わず呼び止める。
「なに?」
振り返るテラス。
「あのさっ」
自分は何を言おうとしているんだろう。
呼び止めた自分に驚きつつも、思いついた言葉を続ける。
「テラスは恋愛について考えるようになったんだろ?」
「うん。でもやめた」
「止めた!?」
「うん。タキノリの言ったこと、もっともだなって思ったし。
考えるより行動するようになるまでは、考えても仕方ないかなって」
テラスは清々しい顔をしていた。
「そ、そうか…」
「タキノリが一緒に遊んでくれて、なんだか吹っ切れちゃった。今日は本当にありがとうね」
そして最高の笑顔をタキノリに向けた。
「テラス、俺と付き合ってみる気ねーか?」
「は?」
テラスはきょとんとする。
(は!)
タキノリは自分の発言に驚く。
「どこか、行きたい場所あるの?」
「いや、その付き合うじゃなくって」
思わず突っ込みを入れるタキノリ。
(って、俺何言ってんだ???)
「冷静になれ…冷静に…」
「独り言?」
不気味そうにタキノリを見るテラス。
「いや、付き合うっつーのは、あれだ」
自分の発言に収拾がつかず、支離滅裂になるタキノリ。
「あれって?」
「男と女のってやつだ」
「はぁ!?」
「な、なんだよ、イヤならいーけど」
「なんでそういう話の流れになるかな?」
あまりにも唐突な提案に、テラスは呆れ気味だ。
「勢いだ、勢い。
俺も恋愛よくわかんねーし、でもテラスのことは、考えてみれば今一番好きな女だし。テラスも俺のことそう思ってくれてるなら、試しに付き合ってみるのも、ありかなって思っただけだよ」
「試しにって、そんないい加減な…」
「とりあえず、今日みたいに遊ぶ日増やしてみねーか?楽しいし!お試し的な?」
言い切ってからタキノリは床に座り込んで床を見つめる。
(何言ってんだ俺はーー!!)
心の中で、自分に激しく突っ込みを入れる。断られる覚悟を決めた。
そんなタキノリを困ったように見るテラス。
そして大きなため息をついた。
「ま、いっか」
「ああ、そーだろーな。…って、え!?」
意外過ぎる返事に、タキノリはテラスを見上げた。
テラスはタキノリの前にしゃがんで言葉を続ける。
「付き合うとかわかんないけど、また遊びに行こう。楽しかったし!」
「マジ!?」
「今までだって何度も2人で遊んでたでしょ」
「いいのか?俺で」
「お試しでしょ。考えるより、まず実行ってね。
タキノリみたいな感じで言われると、私も気が楽だし」
テラスは立ち上がる。
「そうそう、お試しだ」
タキノリも立ち上がった。
(い~やった~---!)
まさかOKされるとも思わなかったので、心の中でガッツポーズのタキノリ。
「じゃぁとりあえず、明日!…は俺がダメだから明後日は?」
「えっと、いいよ。大丈夫」
「よし!じゃぁ明後日10時迎えに行く」
「わかった」
「じゃ、またな!」
「うん。おやすみ」
そして2人は笑顔で別れた。
(うわー、なんか勢いで凄い展開になったぞ)
足取りも軽く、タキノリは自室へ向かった。
自分の口から出た発言にもビックリだったが、受け入れてもらえたことにもビックリだった。
付き合うと言っても友達関係の延長なのだが、タキノリの心はとても弾んでいた。
明後日はテラスと何しよう?どこへ行こう?
考えるだけでも楽しくて、やりたいこともたくさんあり、何をするか決めかねてしまう。
思えばテラスとは最初から話が弾んだ。
ノリが似ているというか、一緒にいてとても楽だった。
今までテラスは恋愛に興味がなく、タキノリもそんなテラスを恋愛対象として見ようとも思わなかった。
異性というより、むしろ同性に近い存在だったのだ。
ところが、ここ最近のテラスの変化が、タキノリの気持ちにも変化をもたらした。
アンセムの登場も、大きかった。
今まで恋愛市場に参加していなかったテラスだったが、アンセムと関わるようになり、半ば強制的に考えるようになったのかもしれない。
まるでアンセムがテラスを変えているようで、なんだか面白くなかった。
そういう自分の感情を気にしないようにしていたが、自分でも思いも寄らないことをテラスに言ってしまう。
無自覚だったテラスへの好意が言葉に出たのだろう。
テラスのことは好きだ。
テラスもタキノリのことが好きだと言ってくれた。
それは友人としてだが、自分には違う想いがあるのかもしれない。
今の気分の高揚は、やはりテラスを異性として好きということなのだろうか。
わからない。
わからないけど、楽しいならいいじゃねーか。
それが、タキノリの考え方だった。
楽観主義。
今のテラスには、そんなタキノリの存在が嬉しいだろう。



