「最近アンセムが御執心ってのはあんたか?」
図書館で本を読んでいたテラスは、唐突に声をかけられた。
見上げると、1人の男がいた。
黒く長い髪を無造作にひとつに束ね、真っ黒な鋭い瞳を持った美形だ。
テーブルに手をつき前かがみになっているが、恐らく相当身長が高いだろう。
胸元がV型の黒い半そでTシャツは、男の筋肉を引き立たせるようなデザインになっている。
(うわ~、なんだかアンセムと対照的な人だな)
アンセムの容姿が中性的な美であるならば、この男はわかりやすい男の魅力で人から視線を奪うタイプと言える。
「おい、俺の話聞いてるのか?」
見上げたまま言葉を発しないテラスに近づいて問う男。
テラスは近づかれただけ身を引いた。
誰だ、この男は。
「あ、すみません。いきなり話しかけられても本に集中してて、何て言ったのかわかりませんでした」
高圧的な態度に、ムっとしながらも答えるテラス。
男はイラっとしながら言った。
「だから、アンセムが最近気に入ってる女ってあんたか?」
「はぁ?何のことですか?」
意味がわからないテラス。
「あんた、テラスじゃないのか?」
「テラスですけど…」
(なんだ、このイラつく女は!)
男はイラつきつつ、テラスをじろじろと観察した。
「あの、何か用ですか?というか、あなた誰ですか?」
最もな質問をするテラス。
居心地が悪い。
カイさんの所へ避難しようか、そんなことを考える。
「俺はリツ。アンセムの友人だ」
「はぁ…」
(この人、視聴会にはいなかったよね)
テラスが初めて見る顔だった。
「で、何の用ですか?」
もう一度聞く。
「あのアンセムが熱心に通っている女ってのを、一目見てみたくてね」
「はぁ?」
何を言ってるんだ、この男は。
「あの、意味がわからないんですが」
「あんた知らないの?アンセムが良く誘う女で、かなり有名になってるんだぜ」
「はぁぁ!?」
なんだそりゃ。
「あのアンセムが熱心に通う女ってのがどんな女か興味があって来たんだよ」
「いやいやいやいや、通われてないし」
プルプルと首を振るテラス。
「そうなのか?でもアンセムが1人の女を自ら誘い続けるってのは相当レアだぜ」
(そんなこと知らないよ)
テラスは心の中だけでつぶやいた。
「で、どうしてリツさんが私に興味を持つんですか?」
とりあえず、きちんと人の話は聞いているテラスである。
「あいつが執着する女が、どんなもんか気になるからだ」
「はぁ?」
やっぱり意味不明だ。
「あ!もしかして、リツさんアンセムのこと好きなんですか?稀に同性を好きになる人がいるって聞きました」
ガクッ。
テラスの思いっきり的が外れた言葉にずっこけるリツ。
見かけによらずお茶目なのかもしれない。
「あんた、それ狙って言ってるのか?」
そしてテラスを見た。
テラスは警戒した目でリツを見返す。
なんだか良くわからない男に用心しているのだ。
「違うか。天然かよ」
「あの、何が言いたいのかわからないんですけど…」
やりとりに疲れて席を立とうとするテラス。
「おっと、まだ会話は終わってないぜ」
リツに腕を掴まれた。
反射的にそれを振りほどくテラス。
「ふ~ん…」
リツはニヤリとテラスを見て笑う。
カイはカウンターからテラスとリツのやりとりを見ていた。
なんだかよろしくない雰囲気だ。
止めに入った方がいいかもしれない。
カイがカウンターから出ようとしたとき、アンセムが図書館に入ってきた。
テラスと約束をしていたわけではなく、単なる偶然だ。
「こんにちは。カイさん」
にこやかに挨拶するアンセム。
「アンセム、あれを見ろ。テラスが男に絡まれてる。今僕が行こうとしたところだ」
「え?」
穏やかではない話に、カイが指された方を見るアンセム。
そこにはテラスとリツがいた。
リツは同学年。良く知っている。嫌な奴だ。
アンセムは2人に駆け寄った。
一方。リツは図書館に入ってくるアンセムに気付いていた。
こちらに駆け寄るアンセムの目の前で、いきなりテラスの腰を頭を掴み、自分に引き寄せた。
「!!!!!!」
突然の行動に逃げる間もなく掴まるテラス。
そしてリツは無理矢理テラスにキスをした。
驚くテラスの口に舌をねじ込む。
それを見たアンセムはリツに突進した。
カッと頭に血が上るのがわかった。
カイもカウンターを出て駆けてくる。
テラスは嫌悪感で体が震えた。
精一杯ジタバタと抵抗するも、強い力で掴まれ逃げることができない。
(イヤダ!イヤダ!気持ち悪い!!!)
自分の口内を蹂躙する舌に、吐き気を覚えた。
「リツ!!!」
アンセムはリツの首を思い切り掴み急所の喉仏を力強く抑えながら、そのままテラスから引き剥がした。
ゲホゲホと咳き込みながらよろけるリツの腹に蹴りを入れる。
激しい怒りを感じた。
アンセムに蹴られて倒れたリツにさらに追い討ちをかけようとしたアンセムだが、駆け出したテラスに気付いた。
「テラス!」
慌てて後を追うアンセム。
「いって~」
蹴られた腹を手で押さえつつ身を起こそうとするリツに、カイは近づいて胸座を掴んだ。
「おい、おまえ。よくもテラスにあんなことをしたな。二度と図書館には来るな。出入り禁止だ。
当然このことは寮長にも知らせる」
カイも怒っていた。
第三寮は自由恋愛が認められているが、お互いの同意がない無理矢理の行為は厳しく禁止されている。
「わかったら、今すぐ出て行け」
そして手を離す。
リツは何も言わずに図書館を後にした。
図書館で本を読んでいたテラスは、唐突に声をかけられた。
見上げると、1人の男がいた。
黒く長い髪を無造作にひとつに束ね、真っ黒な鋭い瞳を持った美形だ。
テーブルに手をつき前かがみになっているが、恐らく相当身長が高いだろう。
胸元がV型の黒い半そでTシャツは、男の筋肉を引き立たせるようなデザインになっている。
(うわ~、なんだかアンセムと対照的な人だな)
アンセムの容姿が中性的な美であるならば、この男はわかりやすい男の魅力で人から視線を奪うタイプと言える。
「おい、俺の話聞いてるのか?」
見上げたまま言葉を発しないテラスに近づいて問う男。
テラスは近づかれただけ身を引いた。
誰だ、この男は。
「あ、すみません。いきなり話しかけられても本に集中してて、何て言ったのかわかりませんでした」
高圧的な態度に、ムっとしながらも答えるテラス。
男はイラっとしながら言った。
「だから、アンセムが最近気に入ってる女ってあんたか?」
「はぁ?何のことですか?」
意味がわからないテラス。
「あんた、テラスじゃないのか?」
「テラスですけど…」
(なんだ、このイラつく女は!)
男はイラつきつつ、テラスをじろじろと観察した。
「あの、何か用ですか?というか、あなた誰ですか?」
最もな質問をするテラス。
居心地が悪い。
カイさんの所へ避難しようか、そんなことを考える。
「俺はリツ。アンセムの友人だ」
「はぁ…」
(この人、視聴会にはいなかったよね)
テラスが初めて見る顔だった。
「で、何の用ですか?」
もう一度聞く。
「あのアンセムが熱心に通っている女ってのを、一目見てみたくてね」
「はぁ?」
何を言ってるんだ、この男は。
「あの、意味がわからないんですが」
「あんた知らないの?アンセムが良く誘う女で、かなり有名になってるんだぜ」
「はぁぁ!?」
なんだそりゃ。
「あのアンセムが熱心に通う女ってのがどんな女か興味があって来たんだよ」
「いやいやいやいや、通われてないし」
プルプルと首を振るテラス。
「そうなのか?でもアンセムが1人の女を自ら誘い続けるってのは相当レアだぜ」
(そんなこと知らないよ)
テラスは心の中だけでつぶやいた。
「で、どうしてリツさんが私に興味を持つんですか?」
とりあえず、きちんと人の話は聞いているテラスである。
「あいつが執着する女が、どんなもんか気になるからだ」
「はぁ?」
やっぱり意味不明だ。
「あ!もしかして、リツさんアンセムのこと好きなんですか?稀に同性を好きになる人がいるって聞きました」
ガクッ。
テラスの思いっきり的が外れた言葉にずっこけるリツ。
見かけによらずお茶目なのかもしれない。
「あんた、それ狙って言ってるのか?」
そしてテラスを見た。
テラスは警戒した目でリツを見返す。
なんだか良くわからない男に用心しているのだ。
「違うか。天然かよ」
「あの、何が言いたいのかわからないんですけど…」
やりとりに疲れて席を立とうとするテラス。
「おっと、まだ会話は終わってないぜ」
リツに腕を掴まれた。
反射的にそれを振りほどくテラス。
「ふ~ん…」
リツはニヤリとテラスを見て笑う。
カイはカウンターからテラスとリツのやりとりを見ていた。
なんだかよろしくない雰囲気だ。
止めに入った方がいいかもしれない。
カイがカウンターから出ようとしたとき、アンセムが図書館に入ってきた。
テラスと約束をしていたわけではなく、単なる偶然だ。
「こんにちは。カイさん」
にこやかに挨拶するアンセム。
「アンセム、あれを見ろ。テラスが男に絡まれてる。今僕が行こうとしたところだ」
「え?」
穏やかではない話に、カイが指された方を見るアンセム。
そこにはテラスとリツがいた。
リツは同学年。良く知っている。嫌な奴だ。
アンセムは2人に駆け寄った。
一方。リツは図書館に入ってくるアンセムに気付いていた。
こちらに駆け寄るアンセムの目の前で、いきなりテラスの腰を頭を掴み、自分に引き寄せた。
「!!!!!!」
突然の行動に逃げる間もなく掴まるテラス。
そしてリツは無理矢理テラスにキスをした。
驚くテラスの口に舌をねじ込む。
それを見たアンセムはリツに突進した。
カッと頭に血が上るのがわかった。
カイもカウンターを出て駆けてくる。
テラスは嫌悪感で体が震えた。
精一杯ジタバタと抵抗するも、強い力で掴まれ逃げることができない。
(イヤダ!イヤダ!気持ち悪い!!!)
自分の口内を蹂躙する舌に、吐き気を覚えた。
「リツ!!!」
アンセムはリツの首を思い切り掴み急所の喉仏を力強く抑えながら、そのままテラスから引き剥がした。
ゲホゲホと咳き込みながらよろけるリツの腹に蹴りを入れる。
激しい怒りを感じた。
アンセムに蹴られて倒れたリツにさらに追い討ちをかけようとしたアンセムだが、駆け出したテラスに気付いた。
「テラス!」
慌てて後を追うアンセム。
「いって~」
蹴られた腹を手で押さえつつ身を起こそうとするリツに、カイは近づいて胸座を掴んだ。
「おい、おまえ。よくもテラスにあんなことをしたな。二度と図書館には来るな。出入り禁止だ。
当然このことは寮長にも知らせる」
カイも怒っていた。
第三寮は自由恋愛が認められているが、お互いの同意がない無理矢理の行為は厳しく禁止されている。
「わかったら、今すぐ出て行け」
そして手を離す。
リツは何も言わずに図書館を後にした。



