最愛から2番目の恋

 それから暫くしてから、迎えのアストリッツァ一行が到着したと知らせが来た。

「今度はこちらがお化粧直し、と待たせましょう」などとつまらない対抗心を燃やすテレサを叱って、急ぎ客室を出て。
 廊下で待たせていたブレイクを始めとする護衛一同も引き連れて、大広間へと向かう。


 本当にこれが最後のチャンスだったのに、と言いたげだったブレイクの視線を避けるが、さすがに彼は姉とは違い、何も口にすること無く、黙って主に従った。


 何だ、もう来たか。
 もう少し遅くても良かったのに。
 そう思いながら、大公の家臣に先導され廊下を進むガートルードの表情は、徐々に引き締められていく。


 大広間では、アストリッツァ一行と大公ご夫妻が、彼女を待っていた。
「お待たせ致しまして、誠に申し訳ありません」とまず先に、難しい顔をしたファン大公ご夫妻に再び腰を落とし頭を下げると。
「いやはや、貴女もこれからが……お察し致します」とアストリッツァ特使に聞こえるように、大公から労られた。


 それを聞き、こちらの方が立場が上だとばかりに、わざと遅れてきた自分達が悪いのに。
 気分を害した事を隠しもしない、その特使の表情に。
 ガートルードは顔には出さずに、冷笑した。