最愛から2番目の恋

 その声は、皆が居るフロアから見上げる位置にある王族席からだった。
 後ろに付いている女官の制止も無視して、王太子の番マリツァ・ダエフが立ち上がっていた。


「わたしに、子供が出来たの!
 王座を継ぐ御子よ?
 このタイミングで赤ちゃんが出来るなんて!
 ねぇラシィ、番の愛がお飾りに勝った、何よりの証拠ね?」



 それは可愛い、マリツァらしいと言えば、らしい……
 可愛い悋気からだったのだろう。


 これまでなら王太子殿下の番として有名だった彼女は、1番に彼と踊れた。
 つまり、後回しにされた事など無かった。

 政略上の、愛されない正妃など怖くもなかった。
 何故なら、自分はクラシオンの番で。
 この10年間、彼の愛情を独り占めしてきたのだから。

 それなのに。
 後から仕方なしに娶られて来たくせに、歓迎夜会まで開いて貰って。
 彼にエスコートされて。
 目の前でファーストダンスを踊られた。
 嫉妬で胸焼けがしてきた。