クラシオンとて王族だからだろう、サンペルグ銀行のやり口は知っているようだが。
残念ながら、それに伴なう契約までは知らない模様だ。
「お前が自分の金で用意したドレス、俺も楽しみにしていよう。
名ばかりの王太子妃の、記念すべきデビューだ。
祝いにファーストダンスは踊ってやるが、それがお前の生涯で最初で最後の、王太子とのダンスだと心得ておけ」
「確かに心得ました」
「それと側妃は、俺の子を身籠った。
側妃はたかが子爵家の娘だが、この国の王太子の子を身籠った、将来の国母となる身だ。
侮ること無く、きちんと敬え」
「……御意」
自分にすがる最愛を連れて、クラシオンが部屋を出ていった。
直ぐ様、テレサが扉に鍵を掛けた。
「あの男こそ、姫様を脅しましたね」
「口だけの脅しよ、大丈夫、彼は何も出来ないわ。
だって、誰にわたしの暗殺を命じればいいのか、判断出来ないのよ?
自分の手を汚すとは思えない。
サンペルグの手の者は、メイドだけとは限らない。
それに彼は……サンペルグの契約を何も知らないから、簡単にあんな事が言えるの」
口座の残高、つまり手に入る献金額が多い方がいいから。
そんな単純な理由で、名義人の死を見逃さないのがサンペルグとの契約だ。
そうでなければ、誰も全財産など預けない。
死後なら、持てる財の全てを神に引き渡してもいい、その代わりに存命中は守って欲しい、そんな人間だけが口座を開き、目的に合った人材を紹介して貰う特別な契約を結ぶのだ。
残念ながら、それに伴なう契約までは知らない模様だ。
「お前が自分の金で用意したドレス、俺も楽しみにしていよう。
名ばかりの王太子妃の、記念すべきデビューだ。
祝いにファーストダンスは踊ってやるが、それがお前の生涯で最初で最後の、王太子とのダンスだと心得ておけ」
「確かに心得ました」
「それと側妃は、俺の子を身籠った。
側妃はたかが子爵家の娘だが、この国の王太子の子を身籠った、将来の国母となる身だ。
侮ること無く、きちんと敬え」
「……御意」
自分にすがる最愛を連れて、クラシオンが部屋を出ていった。
直ぐ様、テレサが扉に鍵を掛けた。
「あの男こそ、姫様を脅しましたね」
「口だけの脅しよ、大丈夫、彼は何も出来ないわ。
だって、誰にわたしの暗殺を命じればいいのか、判断出来ないのよ?
自分の手を汚すとは思えない。
サンペルグの手の者は、メイドだけとは限らない。
それに彼は……サンペルグの契約を何も知らないから、簡単にあんな事が言えるの」
口座の残高、つまり手に入る献金額が多い方がいいから。
そんな単純な理由で、名義人の死を見逃さないのがサンペルグとの契約だ。
そうでなければ、誰も全財産など預けない。
死後なら、持てる財の全てを神に引き渡してもいい、その代わりに存命中は守って欲しい、そんな人間だけが口座を開き、目的に合った人材を紹介して貰う特別な契約を結ぶのだ。



