最愛から2番目の恋

 アストリッツァの社交界でのガートルードの顔見せは、3週間後の歓迎夜会だと教えられた。

 3週間しかない中でも、王太子クラシオンのお飾り妃として初めての夜会で、どれ程のドレスが用意できるのかはデザイナーの才能と腕と気合いに掛かっている。


 テレサの呪いのせいで午前中から鼻をぐずぐずさせていたクイーネが紹介したのは、アヴァロン・カッツェという若い男性デザイナーだ。
 これまで女性デザイナーとしかドレスを作ったことがないガートルードが
『もしかしてクイーネは、護衛騎士は諦めて、今度はデザイナーと火遊びが出来るように斡旋してきたのかな』と思ってしまうくらいに、カッツェは整った容姿をしていた。
 

 取り敢えず、今はカッツェの才能を信じるしかなく。
 たった3週間で限界まで頑張って貰うために、目の前に人参をぶら下げることにした。


「カッツェ、もしわたくしを満足させられるドレスを仕上げられたら。
 カリスレキアへの進出を後押しして、最優先で母や姉に紹介します。
 あの国のドレスデザイナーって、男性が居ないの」

「妃殿下が、私の後ろ楯になって下さると?」

「今回の、ドレスの、出来次第で。
 わたくしの、後ろ楯があれば、貴方の存在は、カリスレキアの社交界で、一大センセーションを、巻き起こせる、かも?」