ガートルードが婚約申請書兼承諾書を見たのは、2度めだ。
1度めは、12歳。
8年前、クロスティアの第1王子だった元婚約者との初顔合わせの時だ。
クロスティア、カリスレキア双方の王族が勢揃いし、両国の宰相が取り交わした契約合意のもとに、13歳のユーシスと12歳のガートルードがサインをして、婚約が締結された。
その後、一見和やかに終わった昼餐の席を立つ前にクロスティア王妃がユーシスに、
「可愛い婚約者に、お庭を案内して差し上げなさい」と言った。
同席していた姉と比べて、可愛いとは言いがたいガートルードを『可愛い』と敢えて言ったり、多分ご自慢な王宮庭園を『お庭』と言う王妃にいい印象は持てなかったが、第1王子の方はもっと感じが悪かった。
両親と一緒にその場から消えようとしていた弟王子を呼び止めて、双方の両親には聞こえぬように声をひそめて
「こんな女と2人にするな」と同行するように命じたのだ。
こいつは食事の最中から、美しいエレメインにのみ話し掛けて、適当にあしらわれていたから、自分には全然興味が無いと分かっていたが、初手から『こんな女』呼ばわりされる謂れは無い。
非常にムカつきながら、何を急いでいるのか知らないが、早足で歩くユーシスに合わせる事もせずに自分の歩幅で歩くガートルードの後ろを、テリオスは彼女のペースに合わせて付いてきてくれていた。
それはまるで3人が、先頭だけが離れているが1列に並んで行進しているように見えているかも、と彼女は可笑しかった。
1度めは、12歳。
8年前、クロスティアの第1王子だった元婚約者との初顔合わせの時だ。
クロスティア、カリスレキア双方の王族が勢揃いし、両国の宰相が取り交わした契約合意のもとに、13歳のユーシスと12歳のガートルードがサインをして、婚約が締結された。
その後、一見和やかに終わった昼餐の席を立つ前にクロスティア王妃がユーシスに、
「可愛い婚約者に、お庭を案内して差し上げなさい」と言った。
同席していた姉と比べて、可愛いとは言いがたいガートルードを『可愛い』と敢えて言ったり、多分ご自慢な王宮庭園を『お庭』と言う王妃にいい印象は持てなかったが、第1王子の方はもっと感じが悪かった。
両親と一緒にその場から消えようとしていた弟王子を呼び止めて、双方の両親には聞こえぬように声をひそめて
「こんな女と2人にするな」と同行するように命じたのだ。
こいつは食事の最中から、美しいエレメインにのみ話し掛けて、適当にあしらわれていたから、自分には全然興味が無いと分かっていたが、初手から『こんな女』呼ばわりされる謂れは無い。
非常にムカつきながら、何を急いでいるのか知らないが、早足で歩くユーシスに合わせる事もせずに自分の歩幅で歩くガートルードの後ろを、テリオスは彼女のペースに合わせて付いてきてくれていた。
それはまるで3人が、先頭だけが離れているが1列に並んで行進しているように見えているかも、と彼女は可笑しかった。



