最愛から2番目の恋

 それに対応したのは、作り物の笑顔を見せるテリオスだ。

「実は、トゥルーディには内密に動いていまして。
 私達は幼馴染みで、彼女が兄と政略的に婚約していた頃からずっと好きだったんですよ」

 幼馴染みって……数える程しか会っていないし、またトゥルーディ……
 ふたりきりの時には言わないのに、テリオスは人前で関係を強調する時にのみ、そう呼ぶ。
 クラシオンは、テリオスを無視するように、ガートルードの方にだけ顔を向けて話し出した。


「このままで、残ることは考えられないか?」

「このまま?」

「俺とお前とマリツァ。
 3人で上手くやっていけそうな気がしないか?」

「いえ、全然思いませんけれど?」

 隣でテリオスが、はー、と息を吐きながら拳を握りしめたので、今も包帯を巻いたままの左手で、彼の右手を撫でた。
 あぁ、なるほど……これが一夫多妻のライオンの本能かと実感した。
 クラシオンとは知り合いくらいにはなれるか、と思っていたが、やはり無理だ。


「あの夜、お互いの事を知って、俺はお前ともやっていける気がした。
 話した通り、マリィは賢い女だから、お前の事も受け入れると言ってくれた」

 いやいや、最愛様は賢いのではなくて、ただ貴方の都合に黙って従っているだけなんですけど! とガートルードは大声で言ってやりたいが、マリィ本人がそれでいいのなら、と我慢して。
 テリオスがしたように、ゆっくり息を吐いた。

 そうやって怒りを紛らわそうとしても
「あの夜、お互いの事を知った」なんて、テリオスに誤解されるような言い方には腹が立つ。
 ガートルードにとっては、クラシオンに偶然会って、会話をしただけだ。