最愛から2番目の恋

「おい、お前! たかが侍従の分際で、さっきから偉そうに何様だ?
 その女がクロスティアの貴族だろうが、何だろうが、ここまで来るのが当たり前だろう!
 サレンディラは怪我人だぞ!? 妊婦だから何だ?
 四の五の言わずに、その癒し手とやらをここまで連れてこい!
 金なら言い値で払ってやる!
 娘は絶対に行かせんからな!」

「……夫婦共に貴族ではないが?」

「何だって? 平民か?
 おいセシオン、聞いたか?
 こいつはお前に、平民に頭を下げて頼め、と言ったんだぞ!
 駄目だ、駄目だ、絶対にサレンディラは行かせん!
 聖女と呼ばせていても、平民などに娘を触れさせるものか!
 お前ひとりが行くのは勝手だが、勘当されると覚悟して行け!」

 サレンディラは、連れて行かせない。
 セシオンが行くなら勘当、とわめく公爵を、テリオスが例の嗤いを浮かべた表情で見ていた。


「じゃあ、この話は無かったことでいいな?
 それと、俺が偉そうなのは、生まれつきだ。
 何様か、と聞いたか?お前こそ何様だ?
 ……あぁ、緊急時に何の役にも立たない、却って邪魔ばかりする老いたライオン様か。
 ヴァルチというプライドは、これからは若いライオンに任せて、リーダーの座を譲れよ」