最愛から2番目の恋

 その瞬間、彼女の前に人が立つ。
 腰の剣に手を添えたテリオスだ。
 父の前にもケインが立っていた。

 自分を守るように目の前に立つテリオスを見上げ、ガートルードは思い出す。

 
 貴方は荒事が苦手なのでしょう?
 剣の稽古からいつも逃げている、とユーシスは嘲笑っていた……



 こちらに文句を付けてきたステファノ・ヴァルチを、息子のセシオンが止めていた。


「父上! カリスレキアの国王陛下に、何と不敬な!」

 彼は父親に付いてきていたが、追従するためではなく。
 愛娘の悲劇に思考がおかしくなっていた父親が心配で、追いかけて来たのだろう。


「離せ、セシオン!
 サレンディラだけじゃない、お前も頭に傷を負った。
 それなのに、こいつらは!
 親子3人、皆が軽傷じゃないか!」

「それは、運というものです!
 第一、王太子妃殿下を差し置いて、嫌がるサレンを最前列中央に座らせたのは父上だ!
 ご自分の野心を、悔いこそすれ……」