最愛から2番目の恋

 王太子クラシオンは、王妃の子ではなかった。
 番の影に隠された2番目の女性の子供だった。
 それは、いわゆる庶子と呼ばれる生まれなのだろうけれど、彼は王妃の子として育ち。
 
 何よりアストリッツァでは、庶子でも跡を継げるようになっていて、その生まれは決して責められるものではないのだけれど。
 ガートルードは涌き出る疑問を抑えられない。


「でも、それでも、それなら何故?
 国王陛下は、番である王妃陛下を失われて、それであれ程憔悴をされているのでしょう?」

 宰相も言っていたではないか、
「番が弱ると、自然と御本人も」と。


「同じライオン種のヴァルチとは、何代も同系交配してきたんだ。
 親父だけではなく、王妃の血も濃くなっていた。
 レオニードとヴァルチには、遺伝的に問題がある者も増えてきて、当主の寿命も代替わりする度に短くなってきている。
 そして7年もの間苦しんだ王妃の最期を見て、俺は遅効性の毒でも盛られたのか、と進言したが。
 発症して7年、そんな毒は考えられないと却下された。
 そうなると、これは遺伝だ、次は俺だ、同じ様に死ぬ、と親父はその恐怖でおかしくなってるだけだ」
 

 
 王妃が亡くなったと知らせを受けてから、確かに弔問まで時間はかかっていた。
 生前もお会い出来なかった。
 痩せてはいたが化粧もされて、きちんと整えられているように見えたご遺体だったけれど、苦しんだ末のご最期だったの?