恋愛日和〜真逆の二人が惹かれ合うまで〜

「宇野、そろそろ帰るぞ。送って行く」

程よく皆が酔っ払い、グダグダし始めると、日向は日和の隣で話しかけた。

「あ、はい。それでは部長、お先に失礼いたします」
「ああ、お疲れ様、佐野くん。違った、えっと日和ちゃん」

ムキッと日向は鋭い視線を部長に送り、日和を促して店の外に出た。
タクシーを捕まえると、日和に住所を尋ねる。

「え?そんな、一人で帰れますから、佐野さんは別のタクシーに……」
「いいから、早く言え」
「あ、はい」

日和が運転手に住所を告げ、タクシーは走り出した。
外回りと飲み会で疲れたのだろう、日和はすぐにうとうとし始める。
スーッと寝入ると、日向は日和の頭を自分の肩にもたれさせた。

静かな車内で、日向の胸に懐かしさが込み上げる。
二人でいたのが当たり前だった日々。
もう一度戻りたいと思うこの気持ちは何なのか?

(あれかな、実家に帰ってジョリーと寝るとホッとする感覚)

きっとそんなものなのだろうと、日向は自分を納得させた。

「着きましたよ」

運転手に言われて窓の外を見ると、3階建ての小綺麗なマンションがあった。

「宇野、着いたぞ」

肩を揺すると、日和はぼんやりと目を開ける。
だがまたすぐに目を閉じた。

「宇野、おい、宇野?」
「んー……。気持ち悪い」
「えっ、大丈夫か?」

ふと視線を感じて顔を上げると、勘弁してとばかりに運転手が振り返ってこちらを見ている。
日向は支払いを済ませると、日和の身体を支えてタクシーを降りた。

「宇野、大丈夫か?」
「はい、すみません」
「いいから。鍵は?出せるか?」
「バッグの、内ポケットに……」
「分かった」

日向は日和のバッグを探って、キーケースを取り出す。
エントランスのロックを解除して入ると、エレベーターで3階まで上がった。

「部屋は?どっちだ?」
「奥の、角部屋です」

ふらふらする日和を支えて奥まで進み、鍵を開けて中に入る。
電気を点けると、ナチュラルブラウンの家具でまとめられた部屋に、ベージュの大きなラグが敷いてあった。

「お邪魔します。えっと、取り敢えず座れ」

日和をベッドに座らせると、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して飲ませた。