敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

そして、ずっとギリギリで立っていた私が、限界を迎えたのはその日行われた社内コンペだった。

私が企画案の発表を終えると、会議室は静まり返った。
プロジェクターの微かな音が耳障りなほどに響いている。

「私からの提案はこちらで以上です……」

再度つけ加えた言葉も虚しく、反応はない。
映し出されたスライドには、自分でも粗さが目立つと感じる企画案が残っていた。

曇った顔で腕を組む上司の姿が視界に入るたび、息苦しさが胸を締め付ける。
誰も口を開かない重い空気が、部屋全体を支配していた。

この空気感に陥る未来は、なんとなく予感していた。

「あ、木崎さん。今度、社内コンペがあるから、結果を残せる企画を出して」

遡ること4日前。残業中の私にそう告げたのは、上司の村上さんだった。

「コンペ、ですか?」
「そう。参加するでしょう?大きな成果も出せてないわけだし」

淡々とした口調で話す村上さんからは、コンペについての詳細な説明は一切なかった。
目的も方向性も曖昧なまま、ただ「期限は一週間後」とだけ告げられた。

「どういった内容が求められるんでしょうか?」と質問してみても、「そんなの自分で考えて」と軽く流されてしまう。

正直、ほかの業務ですら手一杯だったのだけれど、選択権のないその依頼を断ることはできるはずもなく……。

私は、何をどう作ればいいのか分からないまま、手探りで準備を進めることになった。