敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

オフィスの入口を前にした途端、軽くなっていた足取りが再び重くなった。

昨日のプレゼンの失敗――あの叱責の記憶が鮮明によみがえる。村上さんの執拗な文句は、今日も逃れられないだろう。

京介のことで少なからず揺さぶられた心に、さらに追い打ちをかけられる。そう考えただけで、どうしようもなく憂鬱だった。

重い気持ちを抱えながらオフィスの扉を開ける。すると、予想外の光景が飛び込んできた。

ディスプレイに無数のエラーメッセージが点滅し、電話越しの謝罪の声が飛び交う。その様子に私は思わず立ち止まった。

――その日の朝は、システムトラブルによって会社全体が騒然としていた。

「木崎さん、来たなら早く対応して!」

鋭い声が耳を打ち、反射的に対応の輪に加わる。

「すみません。確認します!」

震える声で答えた瞬間、村上さんの鋭い視線が突き刺さる。オフィス全体が、焦りと緊張で張り詰めていた。

「木崎さん、こっちもすぐに対応して。優先順位くらいは自分でつけられるよね?」

村上さんの冷たい声が、耳に突き刺さる。

「こんな時に言いたくないけど、昨日のプレゼンも酷かったみたいだし、私の顔にどれだけ泥を塗れば気が済むの?」

ズシリと心にのしかかる言葉。覚悟していたはずなのに、どうしても受け流すことができない。

「……はい。すみません」

絞り出すように答えるのが精一杯で、キーボードを叩く指先が、かすかに震えていた。