敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

１８話：柊真の過去

穏やかな日々が続き、私にとって柊真さんとの生活は心地よいものだった。

けれど、その穏やかさの中にどこか寂しさがある。小さな波紋が広がるように、私の中でその違和感は少しずつ大きくなっていった。

煌びやかなシャンデリアが輝く会場に、上質なスーツやドレスをまとった人々が集い、優雅な音楽と賑やかな声が飛び交っていた。

「あ、藤堂くん！今日はありがとう！」
「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます！」
「君に紹介したい人がたくさんいるんだ。さあ、こちらへ」

私は柊真さんの隣に立ち、緊張した面持ちで周囲を見渡す。

その日は経営者が集う会食パーティーが行われることになり、招待された柊真さんと一緒に私も秘書としてその会場に赴いていた。

慣れない私は隣に立っているのが精一杯だけど、彼はそんな私を和ませるように優しくフォローをしてくれている。

「茉莉は隣にいればいいから」

柊真さんが小声でそう囁き、私は小さく頷いた。

彼はすぐにビジネスモードへと切り替わり、柔らかな笑顔で多くの人と会話を進めていた。

的確でスムーズな会話運び、相手の関心を自然に引き出すトーク力。
やっぱり柊真さんはすごい……こんなに自然に人の心を掴むなんて。