幼なじみは、私だけに甘い番犬


 4月7日、18時過ぎ、椰子の家のリビングダイニング。
 3年ぶりに、伸長式のダイニングテーブルが最大幅になっていて、その卓上に所狭しと豪華な料理が並んでいる。

 椰子と椰子の両親、玄希と玄希の両親。
 椰子の兄・拓はバイトで不在だが、3年ぶりにほぼフルメンバーが集っている。

「玄希くん、オレンジじゃなくて、お茶の方がいい?」
「はい、出来れば」
「椰子~、冷蔵庫から麦茶出してくれる?」
「……はーい」

 冷蔵庫に麦茶を取りに行く椰子。
 両親たちはお互いにビールを注ぎ合い、玄希は私のグラスにオレンジジュースを注いでくれている。

 3年、いや4年前までの誕生日の時と同じように、見慣れた光景が広がる。


 
 当たり前のように乾杯して、どこからともなく会話が始まる。
 何事もなかったように会話する両親たち。
 私はその異様さに、戸惑っているというのに。

 ちらし寿司や唐揚げとか、大皿の料理を取り分けてくれている母親たちを手伝うように、玄希の取り皿を取ろうとした、その時。
 スッと伸びて来た彼の手が、私の手を掴んだ。