―――――‥‥…
久しぶりの自分の部屋。布団。
カッターどこに閉まったっけ?
ゴソゴソと暗い部屋の中で手探りして、カッターを見つけた。
刃がカチカチという音と共にどんどん伸びる。
手の甲に当ててみた。
‥‥……痛くない。
このまま、手首切っちゃえば死ねる?
あ、水に浸さないとダメなんだっけ。
‥‥‥‥‥………
そっと部屋を出ると、妹がキッチンで水を飲んでた。
「杏ちゃん。」
「愛夢‥…。」
「それ何?」
愛夢は私の持ってたカッターを見た。
「何にもない。」
――――ピシャッ
部屋に戻って戸を閉めた。
しばらくして、戸の方から声が聞こえた。
「杏ちゃん。
ほんとは、嬉しかったよ。帰ってきてくれて。」
私は少し耳を傾ける。
「でもさ、そんな杏ちゃんの顔見て、誰も喜べないよ。
彼氏と何かあったって、気い遣う。」
「私が隼士と別れて嬉しいんじゃないの?
あんた、私が出て行く時、見下してきたじゃない!
あんたは勉強もできて顔も良い。
でも、あたしには何もないの!
隼士しか、希望がなかったの!」
涙がこぼれ落ちた。
私、妹に何言ってるの‥…?
しばらくして、愛夢の声が聞こえた。
「杏ちゃん。愛夢ね、自分のこと必要としてほしかったの。
ママとパパに、いらない子だと思われたくなくて。
テストで良い点取れば、誉めてくれるから。
だから一生懸命勉強した。
杏ちゃんには、隼士さんが居て羨ましかった。
私には、好きな人がいないから。
ママとパパしか、居ないから。」