エレベーターが一階に着いた。


マンションのエントランスを出ようとした時、入って来た大きな袋を抱えたおばさんにぶつかった。

「あら、ごめんなさい!」


そんなに強くぶつかった訳じゃないのに、私は倒れてしまっていた。


「あ…‥すいません。大丈夫です。」

私は急いで立ち上がって軽く頭を下げて出ようとした。


「あ、ちょっと待って!」


振り返ると、おばさんは袋から缶のココアを取り出し、私に差し出した。

「これ、良かったらどうぞ。本当にごめんなさいね。」

おばさんは、ニコッと笑ってエレベーターに乗り込んだ。


ココアを受け取った瞬間、動けなくなっていた。


涙が勝手に溢れてきて、震えが止まらなかった。



立っていられなくて、その場にしゃがみこんだ。