――――……

バタン。


「あれ?起きてたんだ。」


私はリビングに座り込んで下を向いたまま返事をしなかった。


翔平が洗面台に向かう。




「………お前、これ……。」



近付いて来た翔平は、あの箱を持っていた。


「…………あたし…バカだったね。
一人で信じて舞い上がって……。
どうしてよ。どうしてこんな事ができんの?
そこまでしてお金が欲しい?!
付き合えって、あれは客になれって事だったの?」


「違うっ…これはっ」


「みんなにもそうやって言い訳するんでしょ!?
付き合ってるのだって、
あたし一人じゃないんでしょ?!
ここにも、何人もの女を入れてるんでしょ!?」


涙をこらえるのに必死だったけど、もう限界だった。



だから、


溢れる前に、少しの荷物を持ってドアを開けた。


「今まで、ありがとう。」



薄暗い空は、私達二人が出会った日のようだった。



あの時感じたキラキラした幻想のような温もりが



ドアが閉まる音と共に現実の冷たい風に吹き飛ばされた。